有川 浩 (ありかわ ひろ)

高知で育ち、進学時に関西へ。現在、ちょっと(かなり)怠惰めの主婦として関西暮らし十有余年目。
お国訛りが未だに抜けず怪しいニセモノの関西弁を操る、郷里を語るとちょっぴり熱いプチナショナリスト(県粋主義者)。
第10回電撃小説大賞<大賞>受賞作『塩の街』(小社刊)にて作家デビュー。
代表作は『空の中』『海の底』。小説誌「野生時代」(角川書店刊)にも不定期連載中。

植物図鑑


有川 浩

角川書店



2010/1/15

2009/6/30 発行
雑草という名の草はなし、すべての草には名前があると昭和天皇は仰つたそうだ、たしかにそうだな。そして、あまり知られない、人が雑草の一言で片付けてしまう野草たちが重要なポイントとなる、有川さんらしい、ベタベタと甘いラブロマンス。

「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」
「咬みません。躾のできたよい子です」
笑い転げるほどツボにはいった言葉を受けて、行き倒れの男を拾って帰ってしまうのは、20代後半の独身女性。
ええ!いいのかなあ?
翌朝、目覚めたら朝食ができていて、苗字のわからないイツキという青年との不可思議な共同生活が始まる。

有川さんらしいユーモラスで楽しい言葉で綴られた、ほのぼのとした、また切ない恋の物語。
イツキが野草を見事に料理していくのだが、読みながら、こんなふうに料理ができたら良いなと、わが身を振り返り、反省することしきり。

私自身は、野草の種類も知らなければ、料理も当たり前の物しか知らないし、工夫は無いし、だから読んでも右から左に抜けていってしまうのだが、二人の恋物語は、儚く終るのか、めでたく終るのか、なかなか気になる展開だ。

作者のあとがきがいつも面白い。今回のは、「ある日空から僕の目の前に女の子が落ちてきて……」という「天空の城ラピュタ」のように、
男の子の前に美少女が落ちてくるなら女の子の前にもイケメンが落ちてきて何が悪い!ーーーということだそうだ。何だか愉快。

巻末には、ヨモギやタンポポのレシピもついている。


フリーター、家を買う

有川 浩

幻冬舎



2009/12/22

2009/8/25 発行
 商社勤務の父、成一のことが原因で近所のいじめにあい、重度のうつ病にかかってしまった母を救いたい一心で、甘えん坊の二十五歳フリーターの主人公・誠治が成長していく様を描いている。
 誠治は、入社した会社を三か月で辞めてしまい適当にアルバイトを転々とし、自分の部屋でゲームに熱中する日々。ある日、帰省した姉・亜矢子に、母がうつ病になっていることを気付かなかったことをとがめられ、うつの原因を聞き愕然とする。亜矢子に母の世話を頼まれたものの対応がわからず・・・・・・。
 お金を稼ぐために道路工事のアルバイトを始めた誠治に、現場仲間の「おっさん」たちが自分の進むべき道のヒントを与えてくれた。

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 有川さんの本にしては、母親が重度のうつ病で暗い重い内容だと思ったが、誠治が就活する姿や、就職してからの仕事ぶりなどを読んでいくにつれて、気持ちが上に向いてきた。

 就活の時のエントリーシートの書き方、心構え、質問に対する答え方など、なるほどと思った。若い人には参考になるのではないだろうか。
 家族から、迷惑な父、と思われていたが、誠治が仕事を始めてみれば、「経理の鬼」といわれた父は簿記の教師としても、社会人の先輩としても頼りになることがわかってきて父と息子の関係も修復する。

 なかなか素晴らしい、仕事小説だった。現場のおっさんたちも魅力があった。


三匹のおっさん

有川 浩

文芸春秋



2009/12/10

2009/3/15 発行
 還暦ぐらいでジジイの箱に蹴りこまれてたまるかと、かつての悪ガキ3人が私設自警団を結成。定年後、近所のアミューズメントパークに出向中の剣道の達人キヨ、居酒屋の元主人で柔道家のシゲ、機械をいじらせたら無敵の工場経営者ノリの3人を中心に、キヨの孫とノリの娘の高校生コンビがからみ、詐欺や痴漢、動物虐待など、ご町内の悪を斬ります! 「図書館戦争」シリーズが大ブレイクした著者の「イマドキのお年よりは若い」という思いから始まりました。涙あり笑 いありの時代劇をみるような爽快感。

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 三人のキャラクターがバッチリはまって、楽しい。イラストもすごく良い。
リタイア後が、こんなに楽しく張り合いのある生活だったらいいだろうな、おまけに幼いときからの仲間が一緒で。
 特に良かったのは、高校生の孫が、オジイとよばれない為には、おしゃれにも気をつけるんだよ、とファッション指南をしてくれるところだ。

 本を読んだだけではもったいない。
こんな サイト があって、イラストレーターとの対談も楽しめた。


塩の街
有川 浩
アスキー・メディアワークス

2009/1/26
2007/6/30 発行


ラブコメ今昔

有川 浩

角川書店



2008/12/7

2008/6/30 発行

 突っ走り系広報自衛官の女子が鬼の上官に情報開示を迫るのは、「奥様とのナレソメ」。双方一歩もひかない攻防戦の行方は?・・・・・ラブコメ今昔

 出張中新幹線の中で釣り上げた、超かわいい年下の彼は自衛官。遠距離も恋する二人にはトキメキの促進剤。けれど……。・・・・・・軍事とオタクと彼

 「広報官には女たらしが向いている」と言われつつも彼女のいない政屋一尉が、仕事先で出会ったいい感じの女子。だが現場はトラブル続きで……。・・・・・・・広報官、走る!

 旦那がかっこいいのはいいことだ。旦那がモテるのもまあまあ赦せる。しかし今度ばかりは酒落にならない事態が。・・・・・・青い衝撃

 よりによって上官の愛娘と恋に落ちてしまった俺。彼女への思いは真剣なのに、最.後の一歩が踏み出せない。・・・・・・秘め事

 「ラブコメ今昔」では攻めに回った元気自衛官、千尋ちゃんも自分の恋はいっこうにままならず……。ダンデイ・ライオン〜またはラプコメ今音イマドキ編

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Illustration 徒花スクモ


別冊
図書館戦争   U

有川 浩

アスキー・メディアワークス

2008/12/6
2008/8/9 発行


別冊 
図書館戦争 T

有川 浩
アスキーメディアワークス


2008/9/15
2008/4/10 発行
「図書館革命」の終わりで、突然結婚した二人が出てきた。あれぇ、途中はどうなってるの?
 と思っていたら、ベタ甘の二人に焦点を当てたこんな一冊が出た。表紙からしてハートなんだから推して知るべし。

 作者があとがきで書いているように、別冊は登場人物を中心に、本編ほどの騒ぎは入れないとのこと。それでも、目次を見ると
1 明日はときどき血の雨が降るでしょう・・・・・・何かが起こる。
2 一番欲しいものは何ですか・・・・・・あま〜いお話
3 触りたい・触られたい二月・・・そんなにはっきり言うのですか
4 こらえる声・・・・・ん?
5 シアワセになりましょう・・・・こうしてプロポーズ
 ラブだけではなく図書館内に事件は起こっている。

 なかなか可愛い恋人たちの姿だった。ほかの人物にもなにかが起こりそうな気配。
 続編に期待しよう。


図書館革命
有川 浩
メディアワークス

2008/5/5


阪急電車

有川 浩

幻冬舎





2008/4/26

2008/1/25 発行
 阪急電車の中の今津線を主人公に、各駅から駅への車内でのエピソードを描いている。短編集かと思ったら、少しずつ接点があるチェーンストーリーとなっている。

 最初の宝塚駅からは、さすがに図書館戦争の作者だ、図書館で見かけて以来マークしてきた女性と電車で出会い、彼女からもロックオンされていたと知って始まる可愛い恋。「ロックオン」なんていう用語をベタ甘のラブストーリーに使うあたり軍おたくの著者らしいなあ。
 恋に破れ、白いドレスで敵討ちのように、捨てた男の結婚式に出た翔子。
 孫と電車に乗っているおばあちゃん時江が通りすがりではあるが的確に鋭いアドバイスをする。
 暴力的な男とずるずる付き合っていたミサは、にぎやかな女子高生の一団の会話を聞き、別れを決断する。
 『軍おた』と、からかわれてきた大学生の圭一は、同じ大学に通う地方から出てきた美帆と知り合う。
 これらの人々が宝塚駅から西宮北口駅までの間に登場する。

 そして、折り返し、今度は宝塚駅に向かう。

 非常識なおばさん集団在り、派手にみえる女子大生が優しい心使いを見せたり、往路に出た人物の少し後の姿を復路でみせてくれる。
 傷心から立ち直ったり、恋が進んでいたり、毅然とした態度を見たり、読んでいて気持ちがいい。
 そして、高知県出身の著者らしさがもう一つ、高知のお酒「桂月」を美味しそうに飲むユキ。
 
 阪急電車を知っている人も知らない人も、読んでほっこり胸キュンになる恋物語。あとがきまで楽しいのも特徴だ。


クジラの彼


有川 浩



メディアワークス






2007/6/24

2007/1/25 発行
 自衛官だって人間だもの、恋をする、いつでも会えるわけではない、障害を乗り越え、いじらしく、かわいい恋の物語。ベタ甘のラブストーリー。

 合コンで出会った史上まれに見る高物件の彼は、次にいつ会えるかわからない潜水艦乗りだった……「クジラの彼」は、「海の底」で活躍した海上自衛官・冬原春臣の恋人の立場から、遠く離れて連絡がないと不安になる、離れ離れでいる恋人同士の苦悩が描かれる。クジラは潜水艦のこと。

 果てしなく続く長い通路にならぶトイレをめぐり、彼女の戦いが始まった・・・・・・・「ロールアウト」は、戦闘機を設計する民間人女性と、担当自衛官。

 生意気で居丈高なクセにめちゃくちゃかわいい彼女とは、腐れ縁8年の単なる同期なのだが・・・・・・・・「国防レンアイ」は、ホントは好きで一番信頼しているのに、他の男とばかり付き合ってしまう彼女を何年もそばで見守っているけなげな男、なかなか味のある包容力のある男だなあ。彼女はあそこまで醜態を曝していいんだろうか。

 素敵すぎる彼女と、今ひとつ自信のない俺。さらに年の差が気になってなかなか結婚をきりだせなくて・・・・・・・・「有能な彼女」は、「海の底」で活躍した海上自衛官夏木大和・彼女はあの事件のときの女子高生・望。彼女は自衛官になって再度やってきた。

 純情は悲壮?滑稽?あるいは迷惑!?あのフェンスを越えれば、彼女に会える!はずだった・・・・・・・「脱柵エレジー」経験のある先輩自衛官として新人を迷いから覚めさせている二人は、いつの間にか阿吽の呼吸で。

 強くて、きれいで、凶悪にかわいい君を僕はどうやって守ったらいいんだろう・・・・・・・「ファイターパイロットの君「空の中」で出逢った戦闘機乗りの女性自衛官と設計者のその後。私にはこの作品が一番胸にぐっと来た。こういう女性像が好きでもあるし、子どもとのやりとりがステキだった。
 (青字は、カバーより)元の作品を知らなくても楽しめるが、知っておいた方がお得。


図書館危機

有川 浩

メディアワークス



2007/6/9

2007/3/5 発行
 憧れの王子様が、いつもそばにいた鬼教官の堂上だと知って・・・・・・今までと同じように接することはできないが、「王子様卒業」宣言をする郁。どうなることかと前巻の終わりで心配したが、何とか乗り切ったようだ。

 もどかしくて不器用な二人の恋は相変わらずだが、郁、島崎、手塚らは苦労しながらも昇進試験に受かる。子どもの心をつかむという実技試験は面白い。秀才手塚の意外な弱点を発見。

 「床屋」が軽度の放送禁止用語に指定されているのを知って取り上げたと著者「あとがき」にある。そういえば看護婦を看護士というのも、保母を保育士というのも同じことだったかと思い出させてくれ、3章では、言葉狩りについて問題提起している。

 4章で、さあ、戦闘が始まる。茨城県展警備で、良化特務機関が作品『自由』展示を阻止しようと襲撃してくる。迎え撃つ図書隊にも負傷者が出る。図書隊本来の活躍の場だ。
 また、女子寮での陰湿な嫌がらせに立ち向かう潔い郁の姿は涙もろい姿とギャップがあって魅力的だ。郁を称して『170p戦闘職種女』こういう言葉の使い方も、著者はうまい。
 カップルの話としては、玄田三監と記者の折口の大人の不思議な関係も味がある。還暦まで入籍を待つ?ほんとかいな。
 
 図書隊の徽章のカミツレについてのエピソードもよかった。
 次で完結するらしいが、彼ら、彼女らの楽しい会話のやりとりが終るのは惜しい。ハッピーエンドになるといいな。


図書館内乱



有川 浩


メディアワークス




2007/5/13

2006/9/30 発行
 ほとんど恋愛小説を読まない私なのに、これはれっきとしたラブコメではないか。それなのに時々ほろっとしてウルウルしながら夢中で読めてしまう。

 図書館戦争は、新奇さに驚かされ図書レンジャーの勢いもあって面白かったが、今回はヒロインの周りの有能な仲間達を、それぞれ掘り下げ、ロマンスも満載、政治的圧力、図書隊への陰謀もあり、ドンパチではない形の図書を守る攻防が繰り広げられる。

 図書特殊部隊は、班長・怒れるチビの鬼教官・堂上二等図書正、笑う正論、副班長・小牧二等図書正、冷静・有能・同期の手塚一等図書士、喧嘩屋中年・玄田三監、熱血バカ・笠原郁一等図書士、プラス美人の情報屋・ルームメイトの柴崎図書士ら。

 郁の両親が見学に訪れたり、小牧に恋する乙女が登場し、「レインツリーの国」という本を手にしたり、その事が元で陥れられ、小牧がどこかに拘束されてしまう。それに関係しているのが手塚の兄。新しい館長は切れ者で、トラブルを利用しては名前を上げていく。柴崎に近づいてくる男性の存在も怪しいし、そして郁が査問会に呼ばれるなど、危機が続く。

 「5年前に1回会っただけだけど、あたしは今でもあの人に憧れてるし尊敬してるし、あの人が好きです」と、あの人だと気づかず、じぶんの王子様だと気づかず本人の前で言い放つし、「鬼教官は、前にいると恐いが背中にいると誰より心強い」とも思う郁は可愛い。

 作中出てくる「レインツリーの国」は、架空の書物だったが、新潮社から発行され、ステキなラブストーリーになっている。
 


レインツリーの国



有川 浩




新潮社






2006/11/11

 いつもは、「飛び道具」バリバリで、巨大ザリガニや空に浮遊する生命体、塩?などが出てきて、戦闘シーンとラブコメの不思議な世界を展開する。

 
「レインツリーの国」にはそんな飛び道具はないが、有川さんらしい言葉のやりとりがいつもながら楽しい。そして「図書館内乱」に「レインツリーの国」が意味を持って登場するという。

 まずはメールのやりとりで「フェアリーゲーム」という本の結末に対する解釈について二人の言葉で深まっていくのがすてき。本をこんなふうに読み込んでいくのね、と感心しながら・・・・。

二人がメールだけでなく、向かい合って話したくなるのも自然の成り行き。会ってみたら、・・・・何かがズレている。そして、彼女が難聴だったことを知る。
 ここまで読んで、あー、そうだったの? とやっと気づく。「図書館内乱」を先に読んだ人には既成事実だが。
 

 言葉のやりとりは気が利いていて、楽しいというか、おかしいというか、独特の雰囲気を醸し出す会話場面が著者の持ち味だが、それだけでなく小説の背景になるものはきちっと調べている。
 この本で読むまで、中途失聴、難聴、聾、聾唖について区別があることを考えたことがなかった。伝音声難聴と感音声難聴という言葉や区別も知らなかった。手話についても誤解していた。ヒロインの悩みやためらいを通じて学ばせてくれる。
 
そして大阪弁が効果的に使われている。
 

 かわいいラブストーリーで、恋人たちを応援したくなる。人に薦めたい作品だ。「図書館内乱」をあわせて読むともっといい。
 

 あとがきで著者が「『難聴者を主人公にして恋愛物を書く』と申し上げましたら、『それはあれですか、自衛官が地雷処理とかで失敗して難聴になったりするんですか?私の一般的な位置づけはすでにそこか!?」これには笑って、そうだそうだと共鳴した。



空の中

有川 浩

メディアワークス



2006/9/28
著者2作目の作品。
あとがきによれば、「天空の城ラピュタ」を観ていて思いついたそうだが、「怪獣物と青春物足しっぱなしをして空自で和えた」物語になったと。
 著者は子どもの頃から怪獣好きで、本書には怪獣の他、飛行機、恋愛物に郷里の野山や水辺、基地祭で行って楽しかった基地など、著者の好きなものがたくさん詰まっているそうである。
 
 直径数十キロもの知的浮遊生物と人類との邂逅(かいこう)がテーマ。

 登場人物は、武田光稀(みき)空自のパイロット。名前だけでなく男勝り。春名高巳は日本航空機設計から、事故原因究明のため派遣された
。軽いノリのお調子モン高巳と謹厳実直が服を着ているような光稀とのコンビが楽しい。
 未確認物体を喜んで捕獲する親分各の美佳、空自のパイロットの父が死んだ瞬、二人が不思議な生物を捕獲し、フェイクと名づけペットのように飼ったりする様子は楽しい。
 知的浮遊生物【白鯨】(浮遊生物の名)をミサイルで何万個にも分裂したあと、政府がどのように解決していくのか見当がつかず、
面白くて読み急いだ。宮田じい、がカッコよかった。

 突拍子もない設定で、極限状況に追い込まれた人間のドラマが語られる。重苦しさの後にやってくるすがすがしい結末、交わされる会話の軽妙さ。そのギャップが面白い。



海の底


有川 浩

メディアワークス




2006/8/5

「図書館戦争」を初めて読んだ時以来、ファンになった。作者自身が「真面目くさってホラを吹く」という作風だといっているように、話がどこまでいくのやら。
 「海の底(から来た奴ら)」の、とんでもない設定は、横須賀が巨大ザリガニ様のものに襲われるという。
 軽口をたたきあって会話を楽しませてくれるのは、夏木大和三尉と冬原春臣三尉、海上自衛隊の潜水艦「きりしお」の実習幹部。

 
突如、横須賀基地周辺に出現した巨大甲殻類、えびかザリガニか。 なりゆきで艦にとじこもることになった自衛官二人夏冬コンビと子供達が、閉鎖された空間で数日間を過ごす。要するに「潜水艦で十五少年漂流記」(作者の弁) 
 幼い子ども、生意気な中学生、たった一人の女子高生らと若き自衛官とのふれあいがとてもいい。

 
 外では、海から押し寄せ、人を襲って食べる甲殻類の対処をめぐり、警察と防衛庁が貢献度を競い合い、官邸では警察出身者と防衛庁出身者がイニシアチブ争いと内閣出身の日和見主義とで小田原評定をしている。救いは、神奈川県警明石警部と、派遣幕僚団の烏丸参事官のはみだし者二人が、的確に指示を出し、含んだ会話で楽しませてくれる。
 
 シャイな男女の不器用な恋あり、親子についてしっとり感じられる場面あり、荒唐無稽な設定の物語でありながら、笑いと涙がある楽しいパニック冒険ものがたり。



図書館戦争


有川 浩


メディアワークス



2006/4/30
 マンガの破天荒な面白さとテンポと会話の妙を、活字で読んでいるというのが第一印象だった。少年・少女でも読み易いよう、比較的軽めの文体で書かれているライトノベルというジャンルで、あとがきによるとコンセプトは『月9連ドラ風』、もしくは『行政戦隊図書レンジャー』(言い得て妙)。とにかく面白い。
 公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」ができたため、検閲機関の権力が増し、それに対抗できるのは図書館しかない。メディア良化委員会に対し、図書館も防衛力を必要として図書隊(警備隊)を持つことになったと言う設定が面白い。

 主人公、笠原郁は女子としては珍しい図書館の中でも防衛員に応募し、めっぽう威勢がよくて男子に混じっても体力でも負けない。軍事訓練の後、図書防衛特殊班に配属される。豪快な上司、笑い上戸で温和な上司、厳しくて怖いがいつもけんか口調になる上司、美人で口達者な同室の友たちに囲まれ、本を守る闘いを続ける。郁だけでなく周りの人物も魅力がたっぷり。
 本書の魅力は、生き生きとした会話だろう。こんなに私も言葉が浮かんでくればナア、と羨ましい。笑いあり、ラブあり、知識あり。




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