Evangelion Sword & Grail
時に、西暦2015年。
ゴボン。
倒壊し、崩れ、水没したビルを縫うように、黒い巨影が海中を進む。
青空をよぎる雲の合間を抜け、海面から射し込む日の光が巨影の形を照らし出す。
それは黒い巨大なヒト型。肩にあたる部分は白いプロテクターのようなもので覆われ、
腹部には肩のそれと恐らく同じ材質でできているであろう肋骨のようなものが、赤い光球
を抱えるようにささえている。
両のわき腹に何本も入ったエラのように見えるスリットから、時折海水を噴射して推力
にしているようだ。
人間の頭部にあたるものはなく、ただ人間で言うと胸の部分に、ポッカリと2つの穴が
あいた白く丸い仮面のようなものが貼りついている。
それは何処かを目指していた。
迷うことなく。
そう、人間たちがその最後の砦とたのむ、第3新東京市へ向けて…
「…んっ」
リニアトレインの窓から射し込む光に少年は一瞬、その端整な顔をしかめると、右手の
甲でごしごしと目を擦って目を覚ました。
(今何時だろ…)
ふああ、と欠伸をかみ殺しながら少年は腕時計を眺めると、今日会う予定の人物と落ち
合う時間までまだあと30分以上余裕があるのを確認する。
少年以外誰も乗っていない車両のボックス席に、その学生服を着た彼はいた。四季をな
くしたこの国で、一種の違和を感じさせる長袖の白いワイシャツに黒の学生ズボン。年齢
は14歳くらいであろう。短く切った黒い髪に中性的とも言える端整な顔立ちをしている。
向かいのシートにナップザックと肩掛けのスポーツバッグが無造作に置かれていた。
ふと、窓の外を見遣る。
リニトレインは西暦2000年以来、海面が上昇してしまって海岸線の形が変わってしまっ
た沿岸部の路線を大した音もたてずに走ってゆく。
クーラーの効いた密閉された車内からではわからないが、外はきっと暑いのだろう、ち
らほらと雲は見えるものの青く晴れ渡った空からは夏の日差しが容赦なく降り注いでいる。
リニアトレインの窓から見える海には船一つ見あたらないが、替わって倒壊し水没した
ビルが幾つも見えた。
海面から出ている部分には、中に巣でもあるのだろうか、割れたビルの窓から鳥たちが
出入りしている。
少年はそんな風景をぼんやり眺めていると、目の前の台に置かれた、既に封を切られた
封筒から中身を取り出してざっと目を通す。
一緒に出てきたカードはとりあえず台の上に置く。そこには“NERV”と赤で印字され、
詰襟の学生服を着た少年の顔の写真が貼りこまれていた。ネームの部分には“Sinji Ikari”
の文字。
(一体何の用だっていうんだろ。十年以上もほったらかしにしておいて…)
手紙には落ち合う日時と場所が印字され、、迎えに来るという人の写真と、ただ一言
『来い』、とだけ肉筆で書かれていた…。
少年…彼、シンジは今度は写真を手に取って眺める。
(誰だろ、この人? 僕の父親だって人の愛人? …ま、『再婚するんでオマエの財産権が
邪魔だから放棄しろ。』ってとこかな)
写真には妙齢の美女がそのプロポーション、特に胸を強調するポージングで映っていた。
ご丁寧に「ここに注目!」と胸にチェックが入っている。
(顔も憶えてない“父親”、か。どんな人間なんだろ…)
ふとシンジの脳裏にずっと昔の、古い古いイメージが思い出される。
どこかの駅のホーム。去りゆく大きな影を泣きながら追いかける幼い自分。顔はほとん
ど憶えていなかった。思い出も、なかった。
(まあ、絶対に『シンジ、お前を引き取る準備がようやく整った。だから一緒に暮らそう!』
なんてことはないよな。…でも少しは期待してるのかも、僕は。だからのうのうとこれに
乗ってる)
ゴウッという音と共に、リニアトレインがトンネルに入る。
(期待なんかしない方がいい、えてして事態は想像以上に悪いものだから。この十年間で
僕はそのことを学んだなずなのに…)
シンジはシャツの下のクロスを握る。
(でもだったらはやく用事を済ませて戻りたいな、あそこへ。そう、今の僕には帰れる、
帰ってもいい場所があるから…)
「しんじにいちゃいっちゃやだあ!」
「ねえねえ、すぐにかえってくるんでしょ? ねえってばあ」
「もうしんじにいちゃんのおかしたべられなくなるの? そんなのやだあ!!」
災害孤児医療養護施設。『向日葵園』の門の前で、シンジは大勢の子どもたちに囲まれて
戸惑っていた。
子どもたちの年齢は4歳くらいから10歳くらいの子まで様々、それより年嵩の子どもた
ちはシンジを囲む子どもたちの外からその様子を見守っている。
ここの子どもたちに共通なのは、皆一様に心か体か、その両方に傷を負っているという
こと。そして皆、シンジのことを慕っているということだ。
シンジはしゃがんで目の高さを子どもたちに合わせる。ここに来て最初に学んだことだ。
「うん、用事を済ませたら、すぐに帰ってくるから…先生たちのいうこと、よく聞いて、
ね」
シンジは微笑みながら、子どもたちの頭をポンポンと軽くたたいてなだめながら言う。
(帰ってくる、か…)
すると一人、シンジの方に近づいて来る女性がいた。
ショートカットにした栗色の髪の、20代半ば程の綺麗な女性である。
シンジはその姿を認めると、立ち上がって
「マナ先生…」
「行くのね、シンジ君…」
「はい…」
シンジはマナと呼んだ女性の問いかけに、少し俯いて答えた。
「…お父さん、いい人だといいわね」
マナはシンジを見つめて言う。
シンジはそのままの姿勢で答える。
「そう、ですね」
「………」
「本当のことを言うと、あまり期待はしていないんです。今までが今までだったし、期待
すれば裏切られる。いい方に考えれば、結果は大抵悪くなる。そんなものです」
「………」
「…でも、ここに来てから、ここで過ごした2年間は、本当に、本当に、楽しかった。僕
はここに来て、やっと、やっと人間らしく、いや人間になれた。そんな気がするんです…」
シンジの胸にここで過ごした2年間の記憶が、まざまざと思い出され、胸が一杯になる。
一杯になったものはその器から自然と溢れ出す。少年の頬をつたって。
シンジの周りで騒いでいた子どもたちも、皆一様にシンとしてしまう。
シンジが顔を上げて口を開く。無理に笑顔を作ろうとしているのか、顔を歪めて。
「先生」
「何?」
「僕は…、僕は、ここに、帰ってきてもいいんでしょうか?」
マナはすっと両手をシンジに回して抱きしめ、限りない慈しみの篭った声で、荒んだ世
界でその生のほとんどの時間を生きぬいてきた少年に言う。囁くように。
「…いいのよ、シンジ君。いつでも、好きな時に帰ってらっしゃい。皆、待ってるから」
「…はい」
シンジはくぐもった声で答えた。
すると、なにやらくいくいと引っ張られる感じがする。シンジがマナの抱擁をそっと解
いて振り向くと、10歳くらいの黒髪が腰まである綺麗な女の子が、シンジのズボンの裾を
くいくいと引っ張っていた。
「どうしたの?、ユウコちゃん」
シンジがしゃがんでユウコと呼んだ女の子に語り掛けると、彼女は手にしていた小さな
ホワイトボードにキュッキュッと書きこみ、ポケットから取り出したものと共にシンジに
差し出した。
『これあげる。持ってて』と書かれている。彼女はある事件の体験から、声が出せないた
め、このようなコミュニケーションをとる。ここではあたりまえだった。
「これを、僕に?」
シンジはユウコが手にしていたものを受け取る。中央に何かわからないが綺麗な蒼い菱
形の石がはまった銀のクロスだった。首にかけられるように同じ銀色のチェーンもついて
いる。
ユウコはホワイトボードの文字を消すと、新たな言葉を書き連ねる。
『お守り。きっとシンジお兄ちゃんを守ってくれるから』
「いいの、こんな大切そうなもの、僕なんかがもらっちゃって」
ユウコはコクンと頷く。シンジは一瞬返そうかと思ったが、少女の真剣な眼差しに、う
むを言わせないものを感じて、素直に受け取ることにした。
「ありがとう。大切にするよ」
微笑んで、ユウコの頭をなでる。少女も心地よさそうに目を閉じ、身を任せている。
「…シンジ君。そろそろバスの時間よ」
マナがシンジに言う。その声には少し哀しげな響き。
シンジは立ち上がると、地面に置いてあったナップザックを背負い、スポーツバッグを
左肩に掛ける。
「それじゃ、みんな、さよ……」
と言いかけてシンジは口をつぐむ。マナと周りの子どもたちが一同、怖い目でシンジを
見てる。そして、言いなおす。
「……いって、きます」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
マナ先生と子どもたちが唱和した。明るい声と笑顔の下に、隠しきれない寂しさを置い
て。
Evangelion Sword & Grail 第1話
使徒、襲来
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……………
海中を進んでいた謎の巨影が海岸にその姿を現した。
ザバアっと海中から2本の足で立ち上がる。
途端に沿岸道路に配置された“UN”の文字の入った戦車が砲撃を開始した。
「正体不明の物体、海面に姿を現しました!」
「物体を映像で確認!!」
「映像、主モニターに回します」
地中深く、暗い空間に報告が飛び交う。ライトも灯り、その活動に支障のないよう光源
も確保されているのだが、全体として暗い印象がぬぐえない。
複数のディスプレイから発せられる光が際立つ。
ここは、特務機関ネルフ、第1発令所。
その空間の正面にある巨大なモニターに大写しとなって、怪物が姿を現した。戦車の砲
撃と戦闘機のミサイル攻撃をものともせずに歩き出す。
「10年ぶりだね…」
その空間で最も高い位置にある司令席の傍らで、白髪の老紳士が呟くように言う。
司令席の机の上で、両手を組んだ赤いサングラスの男が答える。
「ああ、間違いない…使徒だ」
『…本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されま
した。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい。繰り返しお伝えいたし
ます…』
無人の駅のホームにアナウンスが流れる。
ピーピーピーガシャン
「電話もダメ、か。…今さら戦争?、そんなわけないよな」
シンジは受話器を置くと、呟いた。
シンジがリニアトレインに乗っていると、突然非常事態宣言のアナウンスが入り、予定
の駅よりも2駅も前に停車し、降ろされてしまったのだ。
シンジは改札を出て辺りを見渡すが、人っ子一人いない。
(静かなもんだな。人がいないと…)
ドサッと地面に荷物を降ろす。
(これからどうしよう)
タッタッタッタ…
(え?)
誰もいないはずの町中で、誰かが駆ける音がする。それもひどく軽い。子どものものだ。
シンジが音の方を向くと、白いスモックを着た女の子が赤い風船の紐を握り締め、駅前
の道路を駆けていた。しかも裸足だ。
4,5歳くらいだろうか? 色素の薄い蒼い髪に、赤い瞳をした女の子だった。
シンジの近くまで駆けてきて、そのまま通り過ぎようとしたが…
「あ、危ない!」
シンジが言いながら女の子に駆け寄るが遅く、駆けるのに夢中で足元が見えてなかった
のだろう。捨てられた空き缶に足を取られてステンとしりもちをついてしまった。
そのショックで紐を離してしまい、風船は飛び上がって行ってしまいそうになる。
「よっ、と」
シンジは軽くジャンプすると、紐を掴んで風船を取り戻し、女の子に駆け寄る。
「大丈夫? 痛いところ、ない?」
シンジは手を取って女の子を立たせてやると、訊いた。向日葵園にいた時のように、や
さしく。
しかし女の子は無表情にある一点を見つめるだけ…
(このくらいの年の子だと、泣き出しそうなもんなのに…変わった子だな。でも、こん
な小さな子をほったらかしにするなんてなんて親だ…ん?)
シンジはようやく女の子が自分の頭上を見つめていることに気づいた。
(あ、そうか)
シンジは紐を女の子に渡してやる。
「キミのだね。はい」
女の子は黙って紐を受け取ると、今度はシンジの顔をじっと見つめる。
「どうしたの? 僕の顔に何かついてる?」
シンジはしゃがんで女の子と目の高さを合わせると、話し掛ける。
「あ…」
(?)
「あり、がと…」
女の子は無表情にだが、小さく、拙く、感謝の言葉を述べた。
「どういたしまして」
シンジは微笑むと、クシャクシャと女の子の頭を撫でてやった。
すると、少しだけ、少しだけ女の子の口元がほころび、小さな小さな笑みを、浮かべた。
(なんだ、笑えるじゃないか…)
ガアン!ゴゴゴゴ・・・
「え?」
何かが破裂するような大きな音がシンジの背後で鳴った。ギャアギャアと電柱にとまっ
ていた鳥たちが一斉に飛び立つ。
シンジが振り向くと、その地点からさほど離れていないの山間で、先ほど海中から這い
出した怪物が戦闘ヘリからミサイル攻撃を受けていた。
「なんだ、あれ? 怪物?」
グワンッと怪物がその3本しかない爪で戦闘ヘリを掴むと、その掌から光の槍が伸び、
ヘリを貫き、破壊した。
ヘリはゴゴゴゴゴと炎上し、シンジたちの方へ向かってその破片を撒き散らしながら落
ちてくる。
「危ない!!」
シンジはとっさに女の子を抱え上げると、近くの建物の影に駆けこむ。
「くうっ」
それでも爆風が彼らを襲う。シンジは女の子をかばうように抱えその背を叩きつけてく
る風にさらす。
しばらくして、爆風も収まったように感じると。
キキキイイイイイッ
「お待たせ!!」
シンジが気づくと、横付けされたスポーツカー、青いルノーから黒髪の、写真の美女が
颯爽と現れた。
胸の白い十字架のペンダントが踊る。やや野暮ったいデザインがちょっと彼女にミスマ
ッチだ。
「葛城、さん?」
「碇シンジ君ね、乗って、早く!」
「はい!でもこの子も…」
「この子って、誰?」
黒髪の美女が訝しげに言う。
「え?」
シンジが見渡すと、蒼い髪の女の子も赤い風船も何処にも見当たらなかった。
「どこに、いっちゃったんだろ」
「いいから!早く!!」
葛城と呼ばれた女性がせかす。
そうしているうちに再度、戦闘ヘリによる怪物への爆撃が始まる。
ドオオオン、ゴガアン、ズズズズ……
かなり近い。
「うわっ」
迫る爆風と破片、シンジはたまらずルノーの助手席に駆け込む。
「飛ばすわよ!」
ギアをドライヴに入れ、アクセルを目一杯踏み込む。
「くそおっ!ミサイル全弾直撃、それでも効かんのかっ」
ネルフ第1発令所。
戦略自衛隊の制服を着た男、胸のIDに“白井”とある恐らく戦自の幹部が、仮設され
た自分のデスクに拳を叩きつけ、ののしり声をあげる。
「やはりATフィールドか?」
白髪の老紳士が言う。
「ああ、使徒相手に通常兵器は役にはたたんよ」
赤いサングラスの男は相変わらず肘をつき、両手を組んだポーズを崩さずに答える。
「ごめんね、遅くなって」
疾走する青いルノーの中、彼女が先にシンジに話し掛けた。
「…いえ、助かりました。あっ」
窓から遠ざかっていく怪物の姿を目で追いながら言うと、何かに気づいて声をあげた。
「どうしたの?」
「荷物、駅に置きっぱなしだ」
シンジは露骨にしまったあっという顔をしている。
「そんなこと。ま、後でウチのに取りに行かせるから心配しないで」
「ありがとうございます。葛城さん」
「ミサト、で結構よ、シンジ君」
「わかりました。ミサトさん。それとも碇さん、の方がいいですか?」
「は?」
「だって、再婚相手なんでしょう?僕の父親だという人物の…」
シンジは少々の皮肉を込めて言ったつもりだったが…
ミサトの頭にシンジの言った言葉がようっく浸透するまでたっぷり5秒はかかった。ミ
サトはその言葉の意味に驚き、呆然とし、愕然とし、冷静になろうと努めたが、叫んだ。
「どおっしてそんな考えになるのよおっ!!あんなヒゲと夫婦だなんてじょおっだんじゃ
ないわっ!」
ミサトはシンジに向かって大口開け放って叫ぶ。
「違うんですか?」
いたってシンジは冷静だ。
「大違いよっ。あなたのお父さんはあたしの職場の上司、あたしは特務機関ネルフ所属、
作戦部長・葛城ミサト一尉。国際公務員ってやつ。わかった?」
眼前に迫る、鬼気立ち昇る美女の顔にシンジは声も出せずにコクリと頷いた。
「それよりも…いったいなんなんです、あれ?」
シンジは何気なく、さっきから気になっていたことを口にした。
(僕が今日ここに来ることと何か関係があるのかな。そんなわけないよな)
10年以上連絡の1つもなく、シンジ自身その存在すら忘れていた父親からの急な呼び出
し。そして会うはずの今日現れた謎の怪物。なにか結びつくのだろうか?
「ああ、あれはね、使徒よ…」
「しと?」
「そう、使徒。天使の名を冠する、人類の敵…」
プルルルルルルルルル…
ミサトが話しを続けようとすると、車内に取り付けられた電話が鳴る。ミサトは受話器
を取って話し出した。
「…………………はい、はい、サードは無事保護したわ、再優先で移送中。カートレイン
を用意しといて。え、UNの戦車隊が全滅?、戦自がN2作戦発動?それを早くいいなさい
よおっ」
ガチャンと電話を切ると、ミサトはさらにスピードを上げる。
「どうしたんですか?」
「一刻も早く、できるだけここを離れなきゃならなくなったの、黙ってて、舌噛むわよ!」
「うわっ」
急なGにシンジはのけぞるが、そんな中で窓から外を見ると、さっきまで果敢に怪物に
攻撃を仕掛けていた戦闘機、戦闘ヘリがみるみる離れて行く。
「あれ、みんな離れてく…うわああっ」
カッと一瞬閃光が走ったかと思うと、凄まじい爆風がルノーを襲った。
「キャアアアアッ」
吹き飛ばされ、2転、3転、4転し、ようやく止まる。ただし、車体の上下は逆になっ
て。
逆さの車体から2人がずるずると這い出す。
「大丈夫?ケガはない?」
ミサトが立ちあがる。
「ええ、なんとか、ちょっと口のなかがじゃりじゃりしますけど」
シンジも立ちながら言った。
「じゃあ、ちょっち車起こすの手伝ってくんない?」
「はい」
2人は車の片側に寄ると。
「「せーのっ」」
ガゴンと車を立てなおす。ミサトは窓ガラス全滅。ボディベコベコの車体を見て
「あと32回もローンあんのに…はあ……」
ため息。
「ふふふ…見たかね!、我々戦略自衛隊の切り札、N2爆雷の威力を。これでキミたちの
出番はなくなったというわけだ」
戦自の幹部、白井が哄笑しながら言う。
「電波障害のため、目標確認までしばらくお待ち下さい」
オペレーターの眼鏡をかけた青年が報告する。
「あの爆発だ、ケリはついてる」
白井はふふんと鼻で笑いながら言い放つ。
「爆心地にエネルギー反応!、映像、出ます!!」
「なにいっ!」
発令所の主モニターには大きく、クレーターとなった爆心地に依然佇む怪物の姿があっ
た。
「町一つ犠牲にしたんだぞっ」
もう一人の戦自幹部、小泉が叫ぶ。
「化け物があっ!」
白井がデスクをなぐりつけると、プルルルルルとデスクの電話が鳴る。
白井、小泉と、もう一人いた戦時幹部、加藤が受話器を取ると、2・3事話し、受話器
を置いた。
彼は発令所の自分たちのいる場所よりも一段高い場所、司令席を見上げると
「碇君、本部から通達だ。今から本作戦の指揮権はキミに移った」
司令席から碇と呼ばれた赤いサングラスの男が立ちあがり、彼を見下ろす。
「我々の所有する兵器が目標に対し無効であることは素直に認めよう。だが、勝てるのか
ね?キミ達で?」
碇と呼ばれた男はクイっとサングラスを指で押さえ、整えると
「…そのためのネルフです」
と低く響く声で言った。
ミサトは車をそのまま地下空間・ジオフロントへの通路に入ると、カートレイン、車用
のエスカレーターのようなものに乗りこませ、エンジンを切った。
ここに来るまで、破損車のバッテリーを幾つも失敬しシンジにつっこまれるなんてこと
もあったが、まあ順調な道中であった。
「…で、僕をいったい何処に連れて行こうっていうんですか?」
ゴウンゴウンという音と共に、ルノーは地中へ向かって降りてゆく。
「特務機関ネルフ本部。あなたのお父さんのいるところよ。何も聞いてないの?」
ミサトはシートをリクライニングさせると、両手を頭の後ろで組んだ。
「…父、ですか」
ふう、とため息をつき、シンジはポケットに入っていたIDカードと手紙を取り出すと、
手紙を横のミサトに渡す。
「こんなんで、何をわかれっていうんでしょうか」
ミサトは手紙を見る。そこにはただ一言『来い』とだけ…。
「…確かにそうね」
「だいたい、今さら何の用だっていうんですか?十年以上も放っておいて」
少しずつ、シンジの声から温度が失われてゆくようにミサトには感じられた。表情も駅
前で出会った時より冷たいものになってきている。
ミサトの彼、シンジに対する第一印象は、『報告書よりもずっと素直そうでいい子』だっ
た。ネルフ諜報部も当てにならないなあなどと思っていた。
少なくとも出会った時の印象からは、到底報告書のようなことは考えられない。
彼が6歳から12歳までの6年間、施設を転々とし、子どもと大人合わせて100人を超え
る人間に重軽傷を負わせ、その内14人が未だ入院中だとは…。
その結果シンジは人格障害を疑われ、災害孤児医療保護施設・向日葵園に放りこまれた
のである。
「それは、直接お父さんから聞いた方がいいわね」
(…結局逃げてるのね、あたし。これから彼を命がけの戦場に送りこもうとしてるっての
に。彼を使徒との戦いに巻き込むことに罪悪感を感じてる。卑怯よね、ホント)
「そう、ですか…」
「苦手なの?お父さんのコト」
ミサトが訊きかえす。
「別に、苦手もなにも知らないんですよ。手紙が来てやっと思い出したくらいでしたから。
自分に父親がいたってこと」
(なんで僕はここにいるんだろう?恨み言の一つも言いたいのか?僕は…)
すると、急に視界が開け、地下の巨大空間・ジオフロントが輝くその姿を彼らの前に見
せた。
「…対使徒迎撃要塞都市・第3新東京市、セカンドインパクト後の人類再建の、砦となる
ところよ」
ミサトがこころもち誇らしげに言う。
「対使徒迎撃、ですか。あの怪物と戦うんですか?」
「そうよ」
シンジはその光の町を冷たく見下ろしながら、底冷えのする声で言う。
「…ここにかかってるお金の千分の一でも回ってきたら、“あそこ”の生活も少しはマシに
なってたんでしょうね」
ミサトは彼が何を言わんとしているかわかったので、黙らざるをえなかった。
「UN、戦自ともにご退散ときた。しかし碇、どうするつもりだ? レイはまだエヴァに
乗れるような状態ではないぞ」
白髪の老紳士、特務機関ネルフ副司令・冬月コウゾウが赤いサングラスの男、特務機関
ネルフ司令・碇ゲンドウに向かって言う。
「…そうか、わかった」
ゲンドウはそれまで話していた受話器を机に置くと、そのまま前方の主モニターを見つ
めながら言った。
「問題ない、冬月」
そして机の上のサブディスプレイに視線を向け、彼が司令を勤める組織の作戦部長の後
について歩く少年の姿を認める。
「今、パイロットの予備が届いた」
Evangelion Sword & Grail:Episode 1
Angel Attack
「ここ、さっき通りましたよ」
「うっ」
シンジたちはルノーにのったまま、黒いピラミッド型の巨大な建物の中に運び込まれて
いき、今は車を降りて徒歩でミサトの目指す目的地に向かっているところである。
「ほら、そこのLEVEL20・E−7って…」
「うっさいわねえ、あなたは黙ってついてくればいーの!」
シンジはミサトの半歩後ろから、彼女をジト目で見ながらついて歩いていた。
(…迷ったんだな)
(っかしいわねえ、もう着いてもいい頃なんだけど…)
ミサトたちがエレベーターの前、ちなみにこのエレベーターの前を通りかかるのはこれ
で3度目だが、を通りかかった瞬間、チンという音と共に、扉が開くと中から金髪の美女
が現れた。
グラマラスな体型を白衣に包んでいるのが扇情的である。
2人は立ち止まる。シンジは出てきた金髪美女を見て思った。
(あ、金髪だけど、眉と目は黒いや。向日葵園で飼ってたコースケみたいだ)
ちなみにコースケとは向日葵園の庭で放し飼いになってるチャボのことである。
「遅かったわね、葛城一尉」
自分がニワトリに似ているなどと思われているとは露ほども考えていない金髪美女は、
ミサトを呼びとめる。
「あ、ら、リツコ」
てへへとミサトは頭を掻く。
「全く、人手もなければ、時間もないのよ」
「ごみんごみん」
(結構キツイ感じの人だけど、ミサトさんと仲良さそうだ。友達かな?)
シンジのリツコに対する印象である。
「で、この子が碇シンジ君…サードチルドレンね?」
リツコと呼ばれた女性はシンジの方を向くと、ほんの一瞬目を遠くを見るように細めて
から言った。
「そ、報告書なんてあてんなんないでしょー。あれ読んだらどんなイカれたガキが来るか
と思ったけど、全然普通よ」
(…どんな報告書だったんだろ。ま、想像つくけど。でもサードチルドレンって何のこと?)
シンジはぼんやりとそんなことを考えていた。
「はじめまして、私はネルフ技術1課・E計画担当博士、赤木リツコよ。よろしくね。碇
シンジ君」
リツコが微笑み、右手を差し出す。
「はじめまして、碇シンジです」
シンジは握手し挨拶するが、内心は
(碇ゲンドウ、僕の父親?、こんな美人ばっか職場にはべらせて何考えてんだろ)
などと思っていた。
「さて、2人ともこっちに来て。シンジ君、お父さんに会わせる前に見せたいものがある
わ」
リツコが身を翻して先導しようとする。
「ちょっと待ってリツコ、先に司令のところへ行くんじゃないの?」
「時間がないの、わかっているはずよ、葛城作戦部長」
「予備が到着した。冬月、後を頼む」
言うと赤いサングラスの男、碇ゲンドウを司令席を後にする。
冬月と呼ばれた老紳士は去り行くゲンドウを見ながら思う。
(10年ぶりの親子の再会か…)
リツコとミサトの後をシンジがついて歩く、とても憶えきれない入り組んだ道を抜け、
赤いプールをボートで進んだりしながら、今シンジは左右が赤い液体で満ちたプールに渡
された橋のような場所に来ていた。
薄暗くて、景色がよくわからない。
「今、明かりを点けるわ」
リツコが入り口の壁にあるスイッチバーまで行っってガシャンとバーを降ろすと、一斉
に明かりが灯った。
そしてシンジの目の前にあったものは…
「船?」
隣のミサトがこけた。
「どこ見てんのよ!顔でしょ顔!、ほら、あれが目であれが口で…」
「あ、そういえばそう見えなくもないですね」
無理もない、全身像を見てるならいざしらず、赤いプールから頭だけ浮いていてしかも
人間の顔とは似ても似つかなければそれが顔だなんてわかりっこない。
「へえー、で、これ、なんなんです?」
いつの間にかシンジたちの傍まで来ていたリツコが説明を始める。ちょっと眉間に皺が
寄っている。さっきのシンジの船発言にちょっと傷ついたらしい。
「汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。これはその初号機。我々人類が使徒に
対抗しうる唯一の兵器よ」
シンジは少年らしい興味をもってしげしげと眺める。
全身を固定された巨人の頭。紫のカラーリング。天高く突き上がっている一本の角がど
ことなく日本の鬼を思わせる。装甲を纏った、巨大な、鬼。
「こんなもの僕に見せてどうだっていうんです?」
とシンジが2人に向かって訊いた時、シンジの頭上から低く重い声が響いてきた。
「おまえが乗るのだ」
シンジが見上げると、そこからはるかに上の方、エヴァンゲリオンと呼ばれたものの頭
上に近いところに赤いサングラスをかけた黒いスーツ姿の長身の男が立っていた。
「久しぶりだな、シンジ」
(誰だ、コイツ。いきなり居丈高に話し掛けてきて。嫌なやつだな)
シンジはピクリと目を細める。彼が嫌悪感を現すときのクセだ。
「誰ですか?あなたは」
「私の名は碇ゲンドウ。ここ特務機関ネルフの司令であり、おまえの父だ」
(こんなやつが僕の父親?)
一気に幻滅する。
「なんでこれに僕が乗らなきゃならないのさ?」
しかしゲンドウはシンジの問いには答えず続ける。
「いいか、よく聞け。これからおまえはこの初号機に乗り、そして使徒と戦うのだ」
「待って下さい司令!、レイですらエヴァとシンクロするのに7ヵ月もかかったんですよ。
今来たばかりのこの子には無理です!」
ミサトが割り込んだ。
「プラグに座っていればいい、それ以上は望まん」
「しかし…」
ミサトがなおも反論しようとするが
「葛城一尉、今は使徒撃退が最優先事項です。それには少しでもエヴァとシンクロする可
能性のある人間を乗せるしか方法がないの。それとも他に何かいい方法があるとでも?」
「くっ…」
こう言われてはミサトは黙るしかない。使徒を撃退できるのは唯一エヴァのみ。そして
今は確実に使徒が迫っているのだ。
「さ、シンジ君、こっちに来て」
リツコがシンジを促そうとする。
「…いやだね」
「何?」
マイクでも通っているのだろう、ゲンドウのところまでシンジの呟きは届いたようだ。
「いやだって言ったのさ」
(十年以上も放っておいて、勝手に呼びつけたと思ったら今度はわけのわからない兵器に
乗って怪物と戦えだって?冗談じゃないよ)
シンジは見上げる。先ほどジオフロントを見降ろすときに見せた目で、そして底冷えの
する声で、答えた。
「おまえがやらねば、使徒を倒さねば人類全てが死に絶える。それでもいいのか?」
「十年以上も放っておいて、いきなり重大な責任背負わせないでよ。しかもたかだか14歳
のガキに。だいたいいきなりこんなの乗れるわけないじゃないか」
「…説明を受けろ、これはおまえにしかできん。…いや、おまえ以外の人間には無理なの
だ」
「へえ、14のガキにしか乗れないような欠陥兵器造ってたんだ。実の息子放っておいて。
…いやなものはいやだね」
シンジは嘲けりを含んで言い放つ。冷たい瞳に皮肉を込めて。
(僕を呼びつけたのはこんな理由だったのか…)
ちょっとは親らしい態度を期待していた自分が本当にバカに思えた。自分の父だと名乗
るこの男にも自分自身にも腹が立つ。
「…もう、いい。人類の存亡を賭けた戦いに臆病者は無用だ」
「そ」
「おまえなど必要ない。帰れ」
ゲンドウの低く大きく重い声が響き渡る。ネルフ職員を含めて多くの人間は、ゲンドウ
の持つその存在感自体とその声の持つ威圧感に圧倒されがちなのだが、シンジは気にした
風でもない。シンジの育った場所ではいちいち声の恫喝にビビっていたら生きていけない
場所だったのだ。
「うん、帰るよ。…臆病者で結構。僕は臆病だったから今まで生きぬいてこれた。別に恥
じる気もないよ。さよなら」
(こういうやつに一度でも弱みを見せたらとことん利用されるに決まってる)
シンジの勘がそう告げていた。もうゲンドウが自分の親だという意識もない。
カツカツと足音を立て、振り向きもせず、サバサバとした気分でシンジはその場を去ろ
うとする。
「あ、ミサトさん、出口まで案内してくれませんか?お忙しいんでしたら別の方でも…」
とシンジが言い掛けると…
「冬月、レイを起こせ」
とゲンドウが言うのが聞こえた。
(なんだ、やっぱりちゃんと乗る人間がいるんじゃないか。茶番だな)
そのままシンジはその場を去って行こうとするが…
「シンジ君、どうしても乗る気はないの?」
ミサトとリツコはシンジの行く手を塞ぐように立ち、ミサトがその顔を引き締めて言う。
ネルフ作戦部長の顔だ。
「聞いてたでしょ、僕にこれに乗って怪物と戦う理由なんてないんですから。あれが父親
で僕がその息子だからって、なんで言うこと聞かなきゃいけないんです?」
シンジは先ほどからの冷えた声で言う。
「…そう、でもあれを見てまだそんなことが言えるかしら?」
ミサトがシンジに後ろを見るように視線で指示する。
ガラガラと音を立てて車輪のついた移動式ベッドが、白衣を着た医師らしき人物と2人
の看護婦によって運び込まれてきた。
てきぱきとそのベッドに横たわる人物から点滴がはずされ、医師と看護婦の一団はそそ
くさとその場から退出した。
そこにいたのは…
(え?)
白い、少女だった。
シンジと同じくらいの年齢の、白い白い少女。
シャギーに切った蒼い髪、目はいまだ閉じられている。
レオタードのような白い衣服に身を包んでいる。
そして所々包帯に覆われ、右手にはギプスが、右目は眼帯に覆われている。
怪我に慣れたシンジでも、それがひどいものであることがわかった。
「レイ、予備が使えなくなった。初号機に搭乗、使徒を殲滅しろ」
はるか上から冷酷な命令が下る。
「初号機のパーソナルデータをレイに書き換えて!」
リツコが、周りに居て彼らの様子を伺っていた作業員、職員に指示を下す。
「………はい」
少女は小さく返事をすると、ベッドから起き上がろうとする。
「くうっ…あ、く…」
時折声にならない吐息のような声をもらし、ふるふると苦痛に耐えながら、それでも少
女は肘をベッドの縁につき、手をつき、体を支え起きようとする。
「なっ、どうしてあんな子が…それに怪我してるじゃないですか!何考えてんですか!?
あなたたちは!!」
その姿を見たシンジが傍にいたミサトにくってかかる。
ミサトを睨みつけるシンジ。その目は先ほどまでの冷えたものではなく、多大な熱を伴
っていた。
ミサトはシンジの視線を、瞳を横に動かすことで逸らしながら言う。
「あなたが乗らなければ、その子が乗るしかないの」
「どうして!」
「他の人間には、無理なのよ。適格者・チルドレンでなくてはエヴァンゲリオンは動かせ
ない。だから…」
ゴゴゴゴゴ…ズズズズズズズ……ン
シンジたちのいる場が振動する。
「ヤツめ、ここに気づいたか…」
ゲンドウが頭上を見上げながら言った。
彼らの頭上、第3新東京市に件の怪物・使徒がついに現れた。
胸の仮面にポッカリ開いた2つの穴が発光した瞬間、夜の第3新東京市に十字架の炎が
上がる。
「キャッ」
少女が小さな悲鳴を上げた。
轟音と共に一際強い衝撃がジオフロントを襲い、ベッドが揺れ、傾き、起きあがろうと
していた少女をゆり落とす。
その悲鳴を聞き、シンジがその方に向いた瞬間、グラリと天井で何かが動き、ガラガラ
と幾本もの鉄骨が降り注いできた。
「危ない!!」
シンジは咄嗟に少女に向かって駆け出す。少女の元に辿りつき、その細い体を抱えて走
りだそうとするが、間に合わない!
(ダメかっ)
シンジは少女を抱え込むようにして背を上に向け、襲いくるであろう衝撃に目を閉じる。
ガンガン!
(え?)
しかし一向にその身に衝撃と苦痛が襲いかからないので、訝しがって目を見開くと、そ
こには
「なっ、なんてこと! プラグもインターフェイスもないのに、動くはずがないわ!!」
リツコが愕然として声を上げる。
(なんてことなの…でも、これならきっといける、彼なら…)
ミサトも驚く、しかし作戦部長としての判断も忘れない。
それもそのはず、初号機が腕の拘束具を引きちぎって少年と少女をかばうようにその右
手を差し上げ、降り注ぐ鉄骨を弾いたのだ。
それを見て頭上のゲンドウがニヤリと笑った。
「ねえ、キミ、しっかりして!」
シンジは今どんなハプニングが起こったのかも一向に気にせず、抱えた少女に声をかけ
る。そして…
(なんだ?)
シンジの右手にぬるりとした、生暖かい感触、彼にはなじみの深い感触がある。その右
手を見てみると…
(血、だ)
シンジの目が見開かれる。
おそらく今の衝撃で縫合していた、あるいは止血が解け、傷口が開いたのだろう。
少女は声も出ないのか、くうっと苦しげな息を吐きながらカタカタとシンジの腕の中で
痛みに震えている。
(僕がのらなきゃこの子が乗る。そしてあの怪物と戦う………)
シンジが腕の中の白い少女を見つめながら思う。
(怪我をした、この子が………)
「…シンジ君、あなたが乗らないのなら、傷ついたその子が乗ることになるわ」
シンジたちの傍らに、いつの間にかミサトが寄ってきて言う。
「どうして?怪我してるんだよ!」
シンジは俯き、少女を見つめたまま言った。
「どっちにしろ、あなたが乗らなきゃこの子は死ぬわ。人類もろともね。そしてあなたを
慕うあの子たちも…」
これまた近寄ってきていたリツコが言う。
(向日葵園のことを言ってるの?…あたりまえか。僕の今までの経歴調べたみたいなコト
言ってたし…。
…全ての選択肢を奪っておきながら知らぬ間に責任負わせて、まるで決断の自由がある
かのように見せかける…吐き気がするよ。こんなやり口。こんなやつらの言うこと聞くな
んて死んでもいやだ……
……………………………
……………………………
…でも、それでこの子が、あの子たちが死んでいいって理由にはならない、か)
シンジは胸のクロスを握り締め、心の中で呟くと、彼を見つめる2人の前で、少女を抱
え上げる。お姫様だっこというやつだ。するとそのままそっとベッドに横たえた。
しかし少女は震える体をしてなおも起きあがろうとする。
その少女の肩をシンジは両手でそっと、そおっと押さえ、横になっているように促し、
口を開く。
「…今は寝ていて。少しの間、ほんの少しの間だけなら、休ませてあげられるかもしれな
いから…」
シンジはふっと、やさしく、やさしく、今のこの世界にはない冬の木漏れ日のような笑
みを浮かべ、言った。
(………碇司令?)
白い少女、レイはなにか暖かいような感じに包まれ、今までそれを感じさせてくれた唯
一の人間を思い浮かべ、目を開く。
(ちがう…あなた、誰?)
そこにあったのは自分の肉体年齢と同年齢くらいの少年の笑顔。
(似てる…)
一方シンジは驚いていた、少女の赤い瞳に。そしてその顔が、今日駅で出会った女の子
に年は違えどそっくりであったからだ。
(…そう、あの子たちの…あの子の笑顔、なくしちゃいけないよな…)
シャツごしに胸のクロスを握り締め、シンジは決意する。
(ごめん、ユウコちゃん、コウタ君、マイナちゃん、ミキちゃん………、もう、お菓
子作ってあげられないかもしれない)
シンジは目を閉じて傍らの2人に向き直ると見開き、キッと睨み据え、右手を握ったり
開いたりを繰り返しながら、底冷えのする、凍土の底から湧き出るような冷たい憎しみの
篭った声で、言った。
「…やるよ。僕が、乗るよ」
そのままゲンドウを見上げた。自分を生んだ、そして自分を含めた子どもたちに過酷な
生を強いる世界全てに向かってありったけの憎しみを篭めて、睨みつけた。
「冷却終了」
「ケイジ内全てドッキング位置」
発令所に報告が飛び交う。
「パイロット、エントリープラグ内コックピット位置に着きました」
シンジは学生服のままエントリープラグと呼ばれるコックピットにいた。
頭に2つ、白いパーツを着けている。乗りこむまえにリツコに説明を受けた際に渡され
たもので、エヴァの操縦を助けるものらしい。
『エントリープラグ挿入終了』
『プラグ固定終了、第1次接続開始』
『LCL注水』
シンジのもとにも報告が行く。
「え?」
シンジの足元から薄赤い液体が溢れ、すぐさまコックピットを満たす。
「うわあっ!なんだこれ」
『安心なさいシンジ君、その中でも呼吸できるわ』
リツコの声で通信が入る。
「んなこと言ったって…ごぼっ、あ、ほんとだ」
『ね、それはLCLといってエヴァとのシンクロ、操縦を助け、パイロットの身を戦闘の衝
撃から守ってくれるの。わかった?』
(そんなのさっきのレクチャーで言わなかったじゃないかよ…)
「主電源接続」
「全回路動力伝達、起動スタート!」
「A10神経接続異常なし」
「初期コンタクト全て問題なし、双方向回線、開きます」
発令所のクルー全員が息を呑む。
「シンクロ率43.17%!誤差3%以内です」
おおっと発令所のクルー全員がどよめく。
「すごいわ…」
発令所でリツコが呟く。エヴァの操縦システム・シンクロシステムの実際の稼動につい
ては未だドイツ支部のセカンドチルドンとセミ・セカンドチルドレンの2人のパイロット
とエヴァ弐号機しか成功を見ていないのだが、そのチルドレン2名の初搭乗のデータと比
較しても驚くべき数値なのだ。
(いよいよ、ね)
ミサトがじっとりと汗のにじんだ掌を握り締める。なにしろ世界で初のエヴァによる使
徒との戦いなのだ。ミサト以外のネルフクルーも緊張していた。
ゲンドウと冬月にいたってはあいかわらず司令席でいつもの姿勢を崩さなかったが。
「第1ロックボルト解除」
「解除確認、アンビリカルブリッジ移動! 第1第2拘束具除去!」
「1番から5番、安全装置解除」
「内部電源充電完了、外部電源・アンビリカルケーブル異常なし」
「エヴァ初号機射出口へ!!」
出撃シークエンスを順調に経て、エヴァンゲリオン初号機がその紫の鬼神のごとき巨体
を顕にする。
「5番ゲート、スタンバイ」
「システムクリア、オールグリーン」
ミサトは主モニターの半分に映った初号機と、もう半分の第3新東京市直上を進む使徒
を見つめ、司令席を振り仰いで最後の確認を取る。実の息子を死地にやるのだ、その息子
に親らしい言葉の一つもかけてやればいいと思ったのかもしれない。
「よろしいんですね。碇司令」
「無論だ、使徒を倒さねば我々人類に未来はない」
ミサトは一瞬目元をピクリとさせると、本来の職務に戻り、指示を出す。
「エヴァ初号機、発進!!」
「くうっ」
シンジの体に急激にGがかかり、呻き声をあげる。
ガコンッ
エヴァ初号機が地上に出る。
『最終安全装置、解除! エヴァ初号機、リフト・オフ!!』
発令所のとの通信は常に有線・無線を通して保たれていたため、発令所内の報告も逐一
シンジのもとに届く。
初号機の肩から拘束パーツがはずされ、今全ての戒めから自由となる。
そして初号機・シンジの目前にゆらりと使徒が現れた。
(あれが、使徒)
『シンジ君、まず歩くことから考えて』
リツコからの指示が出る。
(…歩く)
ズシンズシンと巨大な質量の足音をたて、初号機が歩き出した。
発令所では
『やった!』とか『歩いた!』
などとこれまた感嘆の声が上がっていた。
しかしシンジはただ歩くこと、足元にだけに集中してしまい、使徒の動きから注意が逸
れてしまった。
『シンジ君、前!よけてっ』
ミサトが叫ぶ。
「え?」
しかし時既に遅く、初号機の目の前に使徒の大きく開かれた3本指の手が迫り、徐々に
発光を開始する。
(あの光の槍かっ!)
シンジは咄嗟に避けようとする。リツコのレクチャーでこの兵器がパイロットの考えた
とおりに動くものだとは聞いていたので、当然思った通りに動くと考えたのだが、初号機
はグラリと右斜め前方に、ビルと街路樹を犠牲にして転んだだけだった。
エヴァとのシンクロ、自分の体の感覚に重なるようにある大きなもう一つの体の感覚に
まだ慣れていなかったためだ。
ガゴオオオオオオン
「くっ」
転んだダメージはシンジにフィードバックしてくる。
『シンジ君!早く起きあがって、使徒が来るわ!』
ミサトが必死に指示を出すが。
(なんだよこれ、こんなの聞いてないよ…)
しかし使徒はそんなシンジの気持ちなど意にも解さず、初号機の右腕と頭部をギリギリ
と掴み、吊り上げる。
「ぐ…あっ……」
シンジが苦痛でうめく。
『落ち着いて、シンジ君!あなたの腕じゃないのよっ』
「そんな、こと、言っても、現実に、痛いんだ、よ」
『なにやってのよリツコっ、こんなんじゃ戦えないじゃない!』
『さっきからやってるわよ!でも、そんな…ありえない、シンクロ度数が変動してるとで
もいうの?』
(何やってんだよ、今ごろ……があっ)
バキンという音と共に初号機の右腕が垂れ下がる。普通なら失神してもおかしくないく
らいの激痛なのだが、シンジにはまだ意識があった。
『右腕損傷、回路断線!』
発令所ではメガネのオペレーターが報告している。
「く…そおっ、このおっ…」
それでもシンジは空いている左手で、頭を掴んでいる使徒の右手を引き剥がそうとする
が、使徒の仮面の2つの穴が一瞬発光するや否や。
バシュッ
初号機の左腕が肩からちぎれて吹き飛んだ。
「がはあっ!」
コックピットでシンジは左肩を襲った激痛に叫び仰け反る。
使徒は両腕を使用不能にされてもはや対する術を持たなくなった初号機の頭部に、その
掴み上げた左手から光の槍を発し、打ちつける、何度も、何度も。
ガンッガンッガンッガンッ…………
シンジは右目を押さえてうずくまる。
そして使徒の光の槍が一際強く光った瞬間。
「うわあああああああああああああああっ」
シンジは意識を失った。
発令所では主モニターに大写しになった初号機が、使徒の光の槍にその頭部を貫かれ、
向かいのビルに縫いとめられたところだった。
「シンジ君!」
ミサトが叫ぶ。
槍が引き抜かれ、初号機頭部から赤い液体が吹き出す。
ビーッビーッと発令所中に非常事態警報が響き渡る。
「頭部破損!損害不明!」
「制御神経断線!シンクログラフ反転!」
「パルス逆流!」
クルーたちの必死の報告が駆け巡る。
「回路遮断、せき止めて」
リツコだけが冷静に指示を出す。
「ダメです、信号拒絶!」
「モニター反応ありません、パイロットの生死不明!」
「初号機、完全に沈黙!!」
「くっ…ここまでね、作戦中止、パイロットの生命を最優先!プラグの強制射出、急いで!」
ミサトが指示を出すが…
「ダメです、信号受信しません!完全に制御不能!!」
「なんですって!」
初号機コックピット内に、囁くような声が響いていた。
「イ・タ・イ」
ドックン、と心臓が血液を送りだし、シンジは右手を握り締める。
胸のクロスが青い光を、その鼓動に合わせるように淡く放つ。
「イ・タ・イ」
ドックン、と心臓が血液を送りだし、シンジは右手を開く。
「イ・タ・イ」
ドックン、と心臓が血液を送りだし、シンジは右手を握り締める。
「イ・タ・イ・ヤ・ツ」
ドックン、と心臓が血液を送りだし、シンジは右手を開く。
「イ・タ・イ・ヤ・ツ・テキ」
ドックン、と心臓が血液を送りだし、シンジは右手を握り締める。
「イ・タ・イ・ヤ・ツ・テキ・ダ」
その言葉と共に、シンジは閉じていた目をカッと見開いた。
グウォオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアア……
初号機の顎がバキンと音を立てて開き、獣の唸りのような咆哮があがる。
「……エヴァ、再起動」
ショートカットの女性クルーが報告する。
「顎部拘束具を引きちぎっています……」
「な、なんですって!シンクログラフはマイナスのままなのよ!!」
リツコが有り得ない事態に驚愕する。
初号機はスッと折れた右手を前方に差し出すと、握ったり開いたりを繰り返す。
するとみるみる折れた骨格が再形成され、断線した組織が再生する。
ゆらりと幽鬼のように立ちあがると、背を丸める。
グルルルルルルウウウルルルルルルル・・・・・・
威嚇するかのように唸り声を発する
「右腕復元!」
「すごい…」
クルーの報告に、ミサトが驚嘆する。
ルルルルルルルルオオオオオオオオオオオオオオオン!!
何の前触れもなく、背を丸めた獣のごとき姿勢のまま、初号機は使徒に向かって駆け出
した。
使徒はその接近を確認すると、仮面の穴を発光させ、怪光線を初号機に向かって放つが、
初号機は一瞬にしてサイドに跳んでかわす。
初号機の後方で、爆発、十字の火の手が上がる。
初号機はそのまま跳びかかるが……
キイイイイイイイイイイン
金属を弾くような音と共に使徒の前に八角形の光が壁のように立ち、初号機は弾き跳ば
され、その行く手を塞がれた。
「ATフィールド…」
発令所でミサトが呟く。
主モニターには初号機が目の前に立ちふさがった光の壁を右の拳で何度も叩きつけてい
た。
「あれがある限り、使徒には接触できない…」
リツコも呟くが、その時
「初号機もATフィールド展開、位相空間を中和して行きます!」
ショートカットの女性クルー、技術部所属伊吹マヤ三尉が驚きと共に報告する。
計器から溢れてくるデータを読み取りながらリツコが言う。
「中和?、そんなもんじゃないわ、侵食してるのよ、ほとんど一方的にね…」
初号機の突き出された右腕がこじ開けるように光の壁を引きむしり、紙を破るようにや
すやすかき消してしまう。
初号機は、使徒が連続して光線を放てないのを見て取るや否や、肩から体当たりをかま
し、後ろに倒れこむ使徒に馬乗りになって、もがく使徒の左腕を回復した右手で掴み、ブ
チブチといとも簡単に引きちぎる。
キシャアアアアアアアア…
使徒が悲鳴に似た声を発する。
ネルフ発令所では最早完全にその制御を離れたエヴァの凄まじい戦いぶりをただモニタ
ーから見つめるほかはなかった。
一段高い位置にある司令席では…
「勝ったな………碇、やはり彼女なのか?」
「………」
冬月は問うが、ゲンドウが黙ったまま…
「初号機モニター回復!……なっ!」
メガネの男性クルー、作戦部所属・日向マコト二尉が回復したコクピットとの回線から
流れ込むデータを見て驚愕する。
「どうしたの!?」
リツコが問う。
「初号機パイロットの自我境界線拡大、エヴァ全体まで広がっています!」
「初号機プラグ周辺よりデストルドー反応検出、方向、外向きです!!」
「…シンクロ率、シンクロ率マイナス273%……」
「なんてこと…シンジ君が、シンジ君がエヴァを侵食してるとでもいうの?…そんな、人
間の自我境界がそんな状態でもつわけが……」
次々と押し寄せるあまりにも予想をかけ離れた情報に、リツコがそれから導き出される
推測を述べるのだが…
「なっ…オレのシナリオにはないぞ、碇。彼女ではないのか?」
冬月がゲンドウに言う。
「………」
ゲンドウは黙したままだ。
(デストルドー反応、外。…シンジ君、そんなに憎いの、世界が!)
リツコがその意味を心の内で解き明かす。
デストルドー、精神分析において生の本能に根ざすエネルギー・リビドーに対置される
死の本能に根ざしたエネルギーの名称である。
内に向けば己自身の破壊、外に向けば他者の、世界へ向かっての破壊衝動となるという。
使徒は残った右手を初号機に向け、光の槍を撃とうと突き出すが、初号機はそれをひょ
いとかわすとグワシッと大口を空けてその顎で使徒の手首に食らいつく。
ミシッミシッ…ブチイッ
使徒の右手は食いちぎられ、初号機はベッと咥えた使徒の手を吐き捨てる。
ゴオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアッ
初号機は咆哮し、右の拳を振り上げる。
使徒はその胸の仮面の2つの穴を発光させ、怪光線を撃とうとするが…
バキン!
初号機の拳の方が一瞬早く、その仮面を叩き割った。
そのまま初号機は何度も何度も右の拳で使徒を殴りつける。
ゴッゴッガツッガツン、バキッバキッゴキッゴキン……ピシ…
初号機の拳が使徒の腹にある光球をかすめ、ヒビをいれる。
その瞬間、使徒の仮面の2つの穴少しだけに光が灯り、突如起きあがると残った体の部
分を初号機に絡みつかせた。
「使徒内部に高エネルギー反応!」
「自爆する気!?」
クルーの報告にリツコが叫ぶ。
その一瞬の後、発令所は主モニターから溢れる白い光に飲まれた。
凄まじい爆発が起き、第3新東京市に巨大な炎の十字架が上がった。
「状況は?」
一早く発令所の硬直した雰囲気から脱したミサトがクルーに報告を促す。
「…はいっ、映像回復まで後3秒!、3・2・1回復!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
未だ灼熱の炎に包まれた世界に、片腕の巨人がゆらりと佇んでいた。煌煌とその左目を
光らせながら…
クルー一同、人の持つ根源的な恐怖を呼び起こし、畏敬の念すら抱かせるその立ち姿に
息を呑む。
「あれがエヴァの…本当の、姿……」
ミサトが言うが、リツコは小さくその口を吊り上げ、小さな笑みを浮かべて心の中で呟
く。
(…エヴァの?、違うわね。…でも予想以上、いえ、予想外の展開よ、シンジ君。これな
ら老人どもの…あの人のシナリオも出し抜けるかもしれない。それまではエヴァに乗り続
けてもらうわよ。是が非でもね。ふふふ……)
クルーは全員、モニターに釘付けだったため、そのリツコの笑みに気づいた者はなかっ
た。
水を打ったような発令所の静けさの中、上から重い声が響いた。ゲンドウだ。
「状況は?」
その声にクルーは我にかえり、急に慌しく報告が飛び交い出す。
「使徒、エネルギー反応ゼロ、消滅を確認」
「パイロットの生存確認。救出班、急げ!」
慌しくなる発令所、その変化に最初に気づいたのはマヤだった。
「あれ、どうしたのかしら?」
「どうしたの、伊吹三尉?」
ミサトが不審に思って声をかけた。
「…いえ、初号機が、上を見てるんです」
「上?」
主モニターを見てみると、確かに初号機が上空を見上げている。
初号機コックピットで少年が呟く。
「テキ……マダ・クル」
右手を握り締め、開くのを繰り返しながら。
もしこの姿を、右手を握り締め、開くのを繰り返すこの動作をシンジがやるのを、かつ
ての彼を知る者が見たら、即座にその場から逃げ出しただろう。
向日葵園の自称「しんじお兄ちゃんのたましいのいもうと、ソウル・シスター」こと朝
霞ユウコちゃん(10歳)ならば、ホワイトボードに書いて説明してくれただろう。
『あのね、しんじお兄ちゃんが右手をあけたりとじたりするときは、おこってるとき。と
ってもとってもおこってるとき。だからそのときはしんじお兄ちゃんに近づいたらダメだ
よ。あたしを助けてくれたときもそうだったもの。あたしにいたずらしようとしたお兄ち
ゃんたち、みんな血だらけで頭と手足がへんな方向に向いてた』
しばらくして回復したレーダーを見てマコトが愕然とする。
「上空から未確認飛行物体降下!、距離、1800…1500…1000…パターンブルー、間違いあ
りません!、使徒です!!」
「なんですってえ!まだ来るの?こんな時にい!!」
ミサトが叫ぶ。
〈続く〉
予告
彷徨の末、少年がようやく手に入れた束の間の安息の日々を代償に、エヴァは使徒に勝
ち、人類は生き延びた
だがそれは全ての始まり、否、既に始まっていた事象の一過程に過ぎなかった
忘れていた世界への憎しみに、少年は再び心を閉ざす
ミサトの傲慢さはシンジの心を開こうとするが…
次回 Evangelion Sword & Grail 第2話 「凍てついた、記憶」