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社会心理学

「社会的相互作用について」
T 社会心理学
 社会心理学は社会的相互作用を研究の課題とするが、この課題は個人と社会(または集団)の関係をどう捉えるか
ということを前提にしている。
 「社会的」という言葉には、2人以上の人々が相互に影響を与えあった結果、1人の時にはみられないような競争や協力といった現象や集団・組織などの関係などが生み出されるという意味も含まれている。このような個人とその他の両者の相互関係に着眼するとこに社会心理学が成立する論拠がある。
U 相互関係
 個人と社会の相互関係は、1・精神分析学に基礎を置く、対立的に見る立場と2・相互作用論としてとらえる立場があ
る。
1 精神分析学に基礎を置く捉え方
 フロイトは人間の生物学的特徴と外的な社会の力の葛藤から個人の行動を説明する立場に立つ。これはイド(本能
的欲動)、自我(感情、思考、記憶、知覚、信念を含む複合体)、超自我(道徳や社会常識)という3つの次元から人間
の生物学的特徴と外的な社会の力の葛藤から個人の行動を説明するもの。これは、欲動を現実的な仕方で満たす方法を探る。
2 相互作用論
 相互影響的な補完関係として捉える立場。個人の行動が社会の状態や変動に影響を与え、社会もまた個人の行動に対して枠組みとしての拘束力を持つことを示しているが、社会生活全般に拡大して考えると、個人の社会に対する影響も、社会の個人に対する影響も、結局は、人々のあいだの相互作用を媒介にしたもの。そして個人と社会の性格が相互に結びついて社会過程の性格そのものにはね返ってくるという循環的な関係にある。
V 社会的相互作用
 社会的相互作用とは、主観的世界から抜け出すための様々な能力がどれだけ発達しているかで測られるものと言える。身体感覚や感覚器からの知覚のバランスをベースにして、それらを統合する「自我」の働きによって相互作用は成立する。他人が自分に関わり、自分が他人に関わる関係を持つための身体的・精神的受けいれ体制を構造として持つこと、それが出来て初めて、自己と関わってくる他者とが相互に関わりあうことが出来るのである。
1 コミュニケーションと相互作用
 相互作用における最も日常的な関わりは、コミュニケーションである。これは多元的に相互作用を生じさせることができる。
 コミュニケーションの過程を個人のコミュニケーション行為という点からみるならば、それは言語、非言語、表象に取り囲まれた環境にあって、送り手はみずからの状況を定義づけ、つまり記号群を解読し、受けてに対して、記号化して、ことづけの内容を媒体を通して送る行為であるといえる。相互作用とは、そのようなコミュニケーション行為が互いにやりとりされる過程である。
2 表象と相互作用
 人の身辺をみわたすとバッジ、制服、衣装、化粧、髪型、家構え、飾りつけ、儀礼、旗、など多くの表象がある。表彰
は、高貴、美、権威、神などの抽象的な観念をできるだけ具体的な事物によって表現しようとする試みから生じる。中学校などの集合的な場では、制服を着こなしていることが整っていることである。さらに、それ自体がその場で生活を過ごすことができる条件であり、その場を共有する人々と同じ存在(カテゴリー)に入ることを示す道具となる。
 つまり、そのようなカテゴリーの中で、一人だけ作業服を着ていれば周りになんらかの影響を与え、作用を起こさせる(この場合、中学校から出される、または着替えなおすよう呼び出される)こととなる。表象が人に与える作用は
様々である。
3 コミュニケーションと相互作用
(1)嘘と誤解
 コミュニケーション行為は、言葉の原義からいって、相手と記号の意味を共有することを目標にしているはずである。それにもかかわらず、よく見聞し、体験するのは、嘘や誤解である。この人がなぜ嘘をついたりつかれたりするのか
を、つまり個人内の記号解読と記号化に際しての嘘や誤解は、フロイトの防衛機制という概念で説明することができ
る。
 防衛機制では、嘘をついたり、誤解している人は、自らの記号環境の中で、解読した結果が不快であったり、困難で
あったりするので、記号化に際して、片寄った強調を試みているというのである。個人間のコミュニケーションにおいて
は、嘘や誤解は、印象の演出者が印象を操作したり、知覚処理したりすることによって生じる。つまり、相互作用過程
における記号化と記号解読が、それぞれ異なる意味の世界を担った主体によって行われるところに嘘や誤解が生じる土台がある。

  一般的にコミュニケーション行為が、当初の動機達成を成功させるかどうかは、自らの選択と同時に相手側の選択に依存しており、おなじことは、相手側の動機達成についてもいえるので、この基本問題を二重依存性の問題という。
(2)A−B-Xモデル
 相互作用が一つのシステムとして均衡するのは、二重依存性が何らかの形で相補的になる状態があることを示している。これをT・M・ニューカムは、A−B-Xモデルにて示している。

 これは、共通の対象をめぐり,送り手Aと受けてBが形成する関係。のモデルでは,AとBが相互に魅力を感じたり反発を感じたりする志向だけでなく,AとX,BとXの間にも志向を維持しようとする傾向がみられる。この2つの志向を維持するはたらきは「共同志向」と呼ばれる。このシステムは相互依存的な関係によって成り立っているため,Xに対するAとBの態度の不一致,AとBの間の魅力の不一致,AにとってのXの重要性、Xに対するAの態度の確信性,AとBの関係に有しているXの関連性のおおきさ,に応じて,システムは均衡に向かうべく,コミュニケーションを生み出す。AがBの志向を自分の志向に向けて変えさせたり,逆に,自分の志向を相手に合わせる事ができなければ,AはBの志向を歪めて認知する。

 要するに、嘘や誤解という現象をコミュニケーション行為として解明しようとすると、記号化と記号解読のずれを生み
出す自己、相互作用、全社会自体の仕組みを明らかにしなくてはならないということ。
(3)マス・コミュニケーションによる影響
 公衆が、自らの認知、感情、評価を公表し、世論をつくりだし、これによって社会の秩序を形成するという考え方は、
J・G・タルドが示したものであるが、現代社会においては、マスコミュニケーションがこの構想を一手に引き受けている
観がある。公表の媒体として、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネットなどが果たしている影響力は大変強く、当然のように用いられている。しかし、このような社会においても制度として認められた正当な記号の共同化過程は、口頭のコミュニケーションであり、マスコミュニケーションは、これを補完したり、対抗するものとして位置づけられている。
W まとめ
 以上のように、社会的相互作用は、人間の多様な活動の遂行が他者の存在を前提にしていること、つまり、他者との相互作用の中で人々は、役割取得や役割演技を行い、あるいは、自己呈示や他者イメージを形成しながら、活動的存在としてのアイデンティティを獲得していく過程に重点を置いている。

<参考文献>
間場寿著 「社会心理学を学ぶ人のために」  世界思想社