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| 1日 藤巻一保『占いの宇宙誌』(原書房) 東洋における占いの方法論を中心に占いについて概観したもの。 4日 鯨統一郎『北京原人の日』(講談社) 歴史伝奇風ミステリー。かなり無理やりな展開。パス。 鳴海章『死者の森』(集英社) 連続幼女誘拐殺人事件を扱うサイコサスペンス。たぶん一般的な意味ではまあまあなんだろうが、個人的にはパス。鬼畜ホラー的にはかなりのブーイングものだろう。 8日 ピエール・ジベール『聖書入門』(創元社) この本はダメ。 10日 水樹和佳子『イティハーサ』7巻(ハヤカワ文庫) このように着地したのかと感心しながら読了。『ナウシカ』のよう。前向きに考えると現状肯定ぐらいしかないという悲惨さ、あるいは慰め。 11日 『言語帝国主義とは何か』(藤原書店) 目配りのきいたアンソロジー。英語公用語論という現実味のきわめて薄い論議がバカの間にはあるが、そういうことも含め、もちろんインターネットにおける英語の力も視野に入れ、クレオールも沖縄やアイヌの言語も、さまざまな方言も、それにからむ政治的問題も、一応見通している。 日本には公用語はない。日本語は公用語だということを定められないまま使われている。そのようなとき、日本語の臨界はどこか。言語についての考えはまとまることは決しててない。書くことも思うこともせずに生きていられる状態を夢想する。不可能なことではあるけれども。 16日 秋里光彦『闇の司』(ハルキ・ホラー文庫) これはいい。でも定価がちょっと高い。どうせなら「かごめ魍魎」も入れてしまえばよかったのに。bk1 たむらしげる『虹のコレクション』『星の旅行記』(小学館) 掌編のたくさん入った絵物語集。たくさん作れるのも才能のうち。とはいえ、濫造は魅力を薄める。 17日 ビジョルド『スピリット・リング』(梶元康子訳・創元推理文庫) よく出来たファンタジー。もっと長くても良いぐらいだった。これはbk1のSFのコーナーで詳しく書いている。 18日 ロバート・ジョーダン『竜魔大戦6』(斉藤伯好訳・ハヤカワ文庫FT) ああ、話が進まないっ! あと二冊あと二冊と呪文のように唱えてみる。 エドワード・ゴーリー『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『優雅に叱責する自転車』『うろんな客』(柴田元幸訳・河出書房新社) 絵本。これは前々から出ると聞いていたものなのに、今に至るまで書店で目に入らなかった。『幻想文学』の書評期間で考えると落としてしまったことになるので、ここでもぜひ一読をお薦めしておこう。ただし一冊千円とお高いので、せめて書店で眺めるだけでもよい。ABCブックなのに、子供がさまざまな事故で死んでいくという設定の『ちびっ子』、自走する自転車での奇妙な旅行を描く『自転車』、白いスニーカーを履いたペンギン様(よう)の奇妙な生き物がなぜか家に居ついてしまうのを描く『うろんな客』。 『ちびっ子』は陰惨なのだが、嫌みではなく、絵の持つ寂しさが、その暗い世界観を補って見るものをしんとした気持ちにさせる。『うろん』はユーモラスで、ちょっと変で、かわいらしい。 絵は、ペン画ではないかと思うが、黒の線画で、独特の陰影を持っている。特に『自転車』はたいへんに巧緻で、その細密な美しさが印刷ではおそらく再現できていなのではないだろうか。 ちゃんと英文つきなのもよい。しかしこういうものの翻訳はまったく難しい。特に『うろんな客』では短歌形式にすること、最後の句を四字熟語でまとめることを訳者は課しているが(ほんの少し破られているところがある)、この方法論が良いのかどうかは何とも言えないように思う。また『自転車』のタイトルにしても、作者の意を汲むなら、何かしら古めかしい言葉を持ってくるべきところではないかと愚考する。本のタイトルには出版社の意向が強く働くことが多いから、そんなことを言っても仕方ないのだが。 19日 福澤徹三『幻日』(ブロンズ新社) あまりにも評判が良いので読んでみた。一作目の一行目から躓いてしまったが、我慢して読んだら、なるほど、と思われた。平凡な作りでネタも古いが、都筑道夫の怪談みたいな味わいがある。ただしそんなにうまいという感じはない。倉阪鬼一郎がほめるわけはよく分かる。 福澤徹三『怪の標本』(ハルキ・ホラー文庫) 怪談集。bk1 20日 太田好信『民族誌的近代への介入』(人文書院) 「文化を語る権利は誰にあるのか」というサブタイトルで、文化人類学の取るべきスタンスなどについて論考を重ねていく。これは物語るということにおける私の興味とたいへんに重なるところのある書物で、啓発されるところ大。カルチュラル・スタディーズをやっている人には当たり前の話題なんだろうけど。 石澤靖治『大統領とメディア』(文春新書)(京) アメリカ合衆国の大統領とマス・メディアとの密接な関係について説明したもの。いまいち。このての話をまるで知らない人には興味深いかも。 『怪奇鳥獣図鑑』(工作舎) これもbk1におまけで書いた。『山海経』の日本ヴァージョン(明るい色彩でかわいらしい)に伊藤清司がたいへんにかっこよい解説をつけている。 21日 渥見饒兒『ジャパン・シンドローム』(作品社)(京) 事故死した妹の謎に挑む青年を描くサスペンス。金に汚い政治家、土建業者などを告発する話を原発にからめて展開している。まったく普通の小説で、ありきたりな小道具たちだけれど、おもしろく読める。 石牟礼道子『煤の中のマリア』(平凡社)(京) 天草、人吉などへの紀行文と幼いころの追憶文などを含むエッセイ集。 22日 ソ・キョンシク(徐京植)『過ぎ去らない人々』(京) サブタイトルは「難民の世紀の墓碑銘」。朝日新聞社の『二十世紀の千人』のうちの著者担当分47名をまとめたもので、全体主義に抵抗した人、革命家、アナーキスト、社会に抵抗する芸術家などが取り上げられている。 23日 西岡信雄『地球の音楽誌』(大修館書店) 考古学とつながる音楽(弥生の土笛や石笛、銅鐸)やヨーロッパ以外の世界各地の音楽にまつわるエッセイ。音楽の民族誌。カセット付きの本で、口琴やパンパイプ、竹のガムランなどが聴ける。 24日 荻野アンナ『ホラ吹きアンリの冒険』(文藝春秋)(京) 自伝的要素のあるらしい長編小説。父親アンリゆかりの地を巡る娘アンナを描く。ファンタジーではない。ありがたいことに軽いギャグだけで駄洒落はほとんどなかった。 野尻抱介『ピニェルの振り子』(朝日ソノラマ文庫) 宇宙博物学テーマのYA。ネタはどこかで見たようなものながら、かわいらしくていいんだけど、キャラが好みでない。イラストがパス。 26日 森村進『自由はどこまで可能か』(講談社現代新書) リバタリアニズムという個人の自由を最大限重視した社会体制思想の紹介。無政府・無国家的な体制という幻想(一種のユートピア的な想像力)を個人的にはしばしば考えるけれども、こんなことを真面目に(現実的に)考えている集団があるということに驚いた。森村さんの誠実な人柄がよく出ている本だと思う。 |
| 2月の雑感 東京新聞の本以外は何も読んでいない。二月に最も良く読んだのは、『幻想文学』の誌面ということになる。(それでも申し訳ないことだが、誤植があるだろう。)次が前川道介先生の翻訳。これは前川道介訳ドイツ怪奇幻想短篇集を国書刊行会から出してもらえることになったので、そのための仕事である。原稿用紙にしておよそ二千枚分(長篇を除く翻訳のほとんど。すべてではない)をOCRでテキスト化しながら読み、さらに原稿に手を入れながら二読三読している。半分くらいは収録できるかもしれない。どんなものになるのかまだはっきりしていないけれども、とにかく夏までには一冊の本の形になるはず。 |