12, 鉄道
 
POINT 
・ 公共交通機関は、この20年ほどで、かなり禁煙(分煙)が、進み、航空機は全面禁煙になり、
バスもほとんど禁煙になった。
・ 汽船は、一部、分煙が不十分な船舶もあるが、北海道と本州を結ぶ、新日本海フェリーは、
06年5月から、ロビーやレストランはもちろん、1等室や特等室などの個室も禁煙となり、喫煙
できるのは各階1箇所にある喫煙ルームだけとなり、快適な旅を満喫できるようになった。
・ 鉄道とタクシーは、まだまだ対策が不十分で、受動喫煙を強いられずに旅をするのは困難な状況である。
 
 
日本の鉄道の禁煙(分煙)は、年々進んできているものの、諸外国と比較すると、かなり遅れている。
アメリカではすでに19世紀から、長距離列車に禁煙車が存在していた。
日本では近距離通勤列車や路面電車、地下鉄などを除き、初めて禁煙車が登場したのは1976年の
新幹線こだまが最初である。 (図 )
現在は全車禁煙となっている、フランス新幹線・TVGは、開業した1981年当時ですら、すでに10両編成
のうち6両が禁煙車であったが、その当時、日本の新幹線では、「ひかり」「こだま」ともに16両中、たったの
1両しか禁煙車はなく、さらに在来線特急・急行では、上野・新潟間の「とき」に1両あるだけで、全国の
特急に設置されたのは82年のことだった。
その後3年間は自由席1両のみが禁煙車で、指定席の禁煙車が登場するのは、新幹線・在来線、
ともに85年になってからであった。 
 
海外の鉄道紹介番組やインターネット等の情報を集めると、諸外国の状況は以下のようになっている。
         
<米国> 
アムトラック(全米旅客鉄道公社)の長距離列車では、客席や食堂車は全席禁煙で、ラウンジ下
(2階建て車両で、2階がラウンジで、その1階)に喫煙ルームがある。(1人1回15分の時間制限あり)
途中停車駅では、多くの喫煙者がホームに出て喫煙するのが実状。
また、あるとき、喫煙ルームからのタバコ煙がラウンジに漏れ、乗客の苦情を受けて急遽、喫煙ルーム
の使用を禁止したとか。同じような苦情を日本で言っても、恐らく同様な対応は、ほとんど期待できないだろう。
日本と米国での非喫煙者保護の意識は、驚くほど違うものである。
 
<カナダ> 
カナダ大陸横断鉄道は、全列車全席禁煙(食堂車も禁煙)で、途中停車駅でホームに出て吸うしかない
のが原則だが、列車によっては食事時間外の食堂車で喫煙できる場合がある。
 
<ヨーロッパ> 
イタリア国鉄では2004年3月から主要列車は全席禁煙になり、さらに06年からは全面禁煙になった。
 
ドイツ鉄道株式会社(旧ドイツ国鉄)では、欧米にしては比較的禁煙化が遅れていて、メトロポリタンは7両のうち2両は喫煙車。
全車両禁煙だったCNL(ドイツ国内の夜行列車)は強制換気設備を取り付け喫煙可能となった。
チューリヒーハンブルク間のラピタ(夜行列車)は、バーカウンターは喫煙可能。
       
SNCF(フランス国鉄)のTVG (高速列車=新幹線)は、2005年から全席禁煙になった。
ロンドンーパリ間のユーロスターは、2001年10月から全席禁煙となった。
 
スペインとフランスを結ぶエリプソス(ELIPSOS )は、食堂・バーも含め、全面禁煙になった。
 
豪華観光列車(2泊3日食事付きで日本円換算で約14万円)のベニス・シンプロン・オリエントエクスプレスは
、イギリス区間は全車禁煙だが、ヨーロッパ大陸区間は客室は全車個室とはいえ、レストランだけ禁煙で、それ以外は喫煙自由。
イースタン・オリエントエクスプレスもレストランだけ禁煙。
 
<オーストラリア> 
例外的に喫煙可能だったグレートサウスパシフィックの展望車のデッキなども06年秋から完全に禁煙になった。
 
<ニュージーランド> 
1990年にできた禁煙環境法によって全ての交通機関が全面禁煙。
 
<台湾>  全列車禁煙。
 
<韓国>  2003年4月から全列車完全禁煙。
 
<タイ>  2006年5月から全列車完全禁煙
 
 
 
 
         図1  全国主要JR特急禁煙車割合年次推移
  76年 81年 82年 86年 90年 94年 98年 02年 06年
JR東海
JR西日本
 
  こだま 6.3% 24.8% 34.6% 45.8% 53.1% 68.8% 75.0%
  ひかり 0% 6.3% 21.9% 31.3% 41.9% 62.5% 68.8% 75.0%
  のぞみ       43.8% 62.5% 68.8% 75.0%

JR東日本


 
 東北新幹線     8.3% 19.2% 36.1% 50.0% 62.5% 80.0%
 上越新幹線     8.3% 19.2% 37.9% 50.0% 62.5% 66.7% 78.9%
 山形新幹線           66.7% 57.1% 71.4%
 秋田新幹線             58.3% 66.7% 83.3%
 長野新幹線             75.0% 100%
JR九州  九州新幹線                 100%

JR東日本


 
とき(在来線) 0% 8.3%   (上越新幹線へ移行)
あさま(在来線) 0% 8.3% 16.4% 39.3% 50.0% (長野新幹線へ移行)
あずさ 0% 8.9% 19.0% 33.3% 51.1% 54.6% 68.9% 82.6%
ひたち 0% 8.3% 18.2% 52.7% 59.3% 66.2% 72.7% 79.9%
踊り子 0% 11.9% 21.0% 43.2% 47.4% 60.0% 62.8% 76.7%
JR東海 しなの 0% 11.1% 22.2% 37.5% 54.2% 66.7%
   
JR西日本

 
やくも 0% 11.1% 22.2% 41.7% 31.6% 66.7%
くろしお 0% 11.1% 22.2% 31.7% 50.0% 66.7%
しらさぎ 0% 8.3% 24.2% 28.6% 50.0% 70.8% 61.9%
雷鳥(Tバード) 0% 8.3% 20.0% 33.3% 50.0% 66.7%
JR四国 しおかぜ 0% 14.8% 23.7% 53.2% 60.4% 80.0%
JR九州
 
有明(つばめ) 0% 12.4% 62.7% 57.0% 69.4% 78.2% 87.7%
かもめ 0% 8.3% 24.3% 63.0% 59.6% 66.7% 81.1%
 
JR北海道
 
北斗 0% 12.1% 25.7% 32.1% 62.0% 68.1% 74.2% 100%
ライラック 0% 16.7% 30.1% 50.0% 75.0% 100%
おおぞら 0% 10.5% 26.7% 38.8% 55.6% 66.7% 100%

























 
 
    同名列車において複数の異なる禁煙車両率の編成がある場合は原則として平均値を算出したが、
   一部列車においては代表的編成の数値を用いた。
 
2006年3月からJR北海道では、本州直通列車を除き、全車禁煙(喫煙コーナーもいっさいなし)となった。
札幌・網走間や札幌・稚内間では、約5時間強の運行時間だが、一切喫煙できなく、途中、旭川駅や遠軽駅
等での1〜5分の停車時間にホームに出て吸うしかない。
札幌・釧路間の夜行列車も、約7時間の運行時間があるが、車内では喫煙できない。
また、JR東日本とJR九州でも、寝台特急などの一部を除き、2007年から全車禁煙にすることを決めた。
しかし、JR東海とJR西日本では、当分、喫煙車両を残す方針であるし、東海道・山陽新幹線(JR東海及び
JR西日本)の次期新型車両であるN700型も、全席禁煙ではあるが、喫煙コーナーを数カ所設置している。
また、JR四国は2011年までの全席禁煙化をめざすものの、喫煙コーナーを設置する方針であり、日本の
鉄道の完全禁煙化は、当分実現しそうもない。
 
 
   < なぜ、完全禁煙が求められているのか?  >
 
禁煙車と喫煙車、両方が設置されていると、非喫煙者と喫煙者の両方のニーズに応えることが出来て
いいと思われがちだが、それにはいくつもの大きな問題がある。
 
問題1 
喫煙車両に立ち入る客室乗務員や物品販売員が受動喫煙を強いられる。
 
問題2 
喫煙車両に喫煙者のみが乗車するわけではなく、喫煙者を含む家族・グループが喫煙車両を選んでしまい
、非喫煙者が喫煙車に乗ることが少なくない。
子どもが喫煙者の親とともに喫煙車に乗っていることも見かける。
  
問題3 
禁煙車が満席で、やむなく喫煙車を利用することがある。
 
問題4 
せっかく禁煙車であっても、デッキに喫煙コーナーがあると、座席までタバコ煙が流れてくる。
また、禁煙車の隣が喫煙車両であると、デッキを通してタバコ煙が禁煙車に流れ込む。
乗務員の喫煙により、乗務員室から禁煙車内にタバコ煙が流れることもある。
産業医大の大和浩氏、東京大学の中田ゆり氏らによる新幹線での調査では、喫煙車両での
タバコ煙汚染指標となる粉塵濃度は、厚生労働省が定める喫煙室の基準の0.15mg/m3 を上回る
0.37mg/m3 、 喫煙車に隣接する禁煙車では0.08mg/m3 、喫煙車と隣接しない禁煙車では、
禁煙の事務室などと同レベルの0.02mg/m3であり、喫煙車に隣接する禁煙車のタバコ汚染が
ひどいことが数値で裏付けられた。
 
問題5 
全席禁煙であっても、喫煙室がある場合、完全にタバコ煙が漏れない構造にするのは困難であるし、
仮に完全に漏れないとしても、喫煙して客室へ戻る乗客の呼気からのタバコ呼出煙や、着衣に付着
したタバコ煙(粒子)が発散し、周囲の乗客に受動喫煙を強いることになる。