・節煙の間違いについて
北海道かもめ歯科院長 清水央雄   098-5723 北海道枝幸郡浜頓別町南3条3丁目 


以下は、日本公衆衛生学会雑誌2000年12月号に投稿した論文です。

節煙について

先進国における、最も予防が可能な疾患であるタバコ病に関しては、本誌において様々な研究報告があり、非常に役だっています。
しかし、ときおり節煙にふれる報告を見受けます。
また、健康日本21におけるタバコ対策に関しては、禁煙とともに節煙も推進する内容となっています。
本誌においても、「携帯歯ブラシによる節煙および口のさわやかさに対する効果の検討」などでは、節煙をテーマに上げています。
しかし、節煙に関して、禁煙指導を行う医師などから、大きな疑問の声が上がっています。
肺癌や心疾患などの罹患率は、1日タバコ本数別では、本数が多くなるに従って罹患率が増加するため、喫煙本数を減らすと健康によいと思い込んでしまいがちです。
しかし、喫煙本数を減らしても、体はそれまで摂取していたニコチン量を要求し、無意識のうちに煙を深く肺に吸い込む、あるいは吸い込んでからしばらく
呼吸を止めるなど、代償性喫煙パターン変化が起こり、血中ニコチン濃度や、CO-Hb量は逆に増加する報告がされています。1) 
また、同様に軽いタバコに替えても血中CO-Hb量は、逆に増加する報告もあります。2)
また、節煙から始めて禁煙しようとしても、タバコ依存から脱出することはできず、苦痛が強く、成功率は、すっぱり禁煙する成功率よりも低いという報告が
多く3)4)5)6)7)8)、節煙は意味がないばかりか、公衆衛生上不適切であるというのが禁煙指導の専門家の一致した意見です。
今後の研究や国民に対する公衆衛生活動上、節煙は取り上げず、禁煙に絞って行っていただきたいと考えます。
本誌投稿の査読においても、以上の点を充分に考慮していただければ幸いです。


文献
1) Ho-yen Do, Spenc VA, Mordy JP, and Walker WF. Why smoke fewer cigarettes?  British Medical Journal 1982; 284: 1905-1907.
2) Benowitz NL, Kuyt F, Jacob P. Circadian blood nicotine concentrations during cigarette smoking. Clinical pharmacology and therapeutics 1982; 32(6): 758-764.
3) 林高春. ニコチン依存. 臨床成人病 1999; 29(3): 308-314.
4)林高春. 効果的な禁煙指導. 医学のあゆみ1998 ; .185 (7): 441-444
5) 林高春.タバコがやめられない本当の理由. 東京: PHP 研究所, 1999; 66-77
6) 林高春. 5日できっぱりタバコをやめる本. 東京: 光 文社, 1991; 77-81
7) 阿部眞弓. 禁煙外来. 東京: 芳賀書店, 1999; 22-23
8) 宮里勝政.タバコはなぜやめられないか. 東京: 岩波 新書, 1992; 164





ところが、公衆衛生雑誌2001年6月号で、以下のように再反論してます。
お読みになれば、大きな間違いであることは理解できると思いますが、このような論文を載せてしまう学会も問題だと思います。

「節煙について」に対して  石田恭子 小田正秀
本誌1月号(注:これは00年12月号の間違い)の会員の声(1)を拝見し、私どもの論文(2)に対し、大きな誤解が生じる
危惧を抱きましたので一言述べさせていただきます。

1,論文の相違 
節煙で充分であると考える健康教育の指導者はほとんどいないと思っております。
私どもの論文も始めは「ポケット歯ブラシによる禁煙効果についての検討」と題しておりましたが、調査期間が短く
禁煙効果を調査してないため節煙に変更した経緯があります。
この論文の目的は、ポケット歯ブラシが喫煙の回避行動として効果があがるかないかと調査することであって
節煙を目的としたものではありません。
これは論文内容を読んでいただければ理解していただけると考えます。

2,ポケット歯ブラシの効果について その後の報告

ポケット歯ブラシのみで禁煙に成功した例はありません。
お茶を飲む、スポーツをする、シャワーを浴びる等その他の喫煙回避行動と合わせて禁煙指導を行っているからです。
その一連の喫煙回避行動の一つとして歯を磨くという行動が役立っていると認識しております。
極少量(米粒大程度)のライムやミント味のフッ素入り歯磨剤をつけて使用するという爽快感もあり、より長時間
使用できるとの意見をいただき、その効果的使用方法についても検討を行っているところです。

3,節煙についての考察
喫煙本数を60本、40本、20本、10本と徐々に減らしていき、やがて完全禁煙しようとする減煙法は、
一挙に禁煙しようとする断煙法に比べて効果が低いという報告があります。
しかし、それはこれまで減煙法についての研究が少なかったことがその理由の一つではないかと考えております。
ポケット歯ブラシが減煙法の一助となればと考えております。
また、節煙を完全に否定するという考えには賛成いたしかねます。
何故ならば私が指導している方の中には、それまで1日60本吸っていたのを5本にした方が2名いらっしゃるからです。
その方の口腔内は非喫煙者と比較しても臨床的には差を認めないくらい改善しております。
その方は1日5本に決めて、1人の部屋で楽しんで喫われているそうです。
現在も完全禁煙を目標に経過観察はしておりますが急いではおりません。
意志の強い人ではこういう指導も選択肢の一つになるのではないかと考えます。
また、ガン患者とその家族を対象にした雑誌に、完全禁煙しようとしたが、返っておおきなストレスになり
精神的に落ち着かず、1日数本吸うことにより、それが解決したという記事がありました。
それを完全に否定することが本当に正しいのか、そういう方の心の声を聞いて上げるのも医療では
ないかと思っております。

4,これからの禁煙指導

喫煙者の中にはまったく禁煙を考えてない人も少なくありません。
そういう人に対して、せめて子どもの前や公共の場では喫煙をやめてもらう方法としてポケット歯ブラシは効果があると考えます。
先日もヨーロッパ旅行をされた方が長時間のフライトをこの歯ブラシで我慢できたと喜ばれていました。
最近、心臓病や早産の原因の一つであると注目を集めている歯周病を予防し、口臭を感じなくなり、喫煙回避行動にも
なるものとして、歯磨き行動が位置づけられるか否かを検討してみたいと考えております。
現在、私は小・中学校生に対する喫煙防止教育こそ重要であると考えております。
ある小学校では私が講演した後、クラス全員が「将来タバコを絶対吸わない」という文集をくれました。
もう1点、タバコ生産者を含めたタバコ産業に関連した人々の生活補償も非常に重要な問題と考えます。
それらを含めて国民全体で取り組む必要があるのではないでしょうか。

文献:
1) 清水央雄 節煙について 日本公衛誌 2000;47:1043
2) 石田恭子、小田正秀 携帯歯ブラシによる節煙および口のさわやかさに対する効果の検討
  
日本公衛誌 1999;46;1078-1083
  


日本禁煙学会