ホーム > 家メニュー > 建築時メニュー > 汗腺の発達(2004/6/21up)

住宅について考えたことをメモメモ。

●汗腺の発達

人間の暑さに対する適応能力は、人によって大きく異なります。 暑さに耐えられる個人差は、各人が持つ汗腺の数によることがよく知られています。

汗腺がたくさんある人は速く体温を下げることができますが、 汗腺の数の差は遺伝子によるものではありません。 人は生まれた時には同じような数の汗腺を持っていますが、その汗腺は まだ機能していません。 生後3年(2年説もあります)の間に、これら汗腺の一部が機能するようになります。 汗腺が機能するようになる割合は、子どもが過ごした周囲の気温に依存する ことがわかっています。 3才までに、さらされた気温が高ければ高いほど、機能する汗腺の数が多くなります。 生後3年でこの汗腺発達プログラムは固定され、その後に気温の変動が あっても、機能する汗腺の数には影響を与えません。 つまり3才までに、機能するようにプログラムされた汗腺が、 その人の終生の汗腺となるのです。[注]

反対に寒さに対する感覚は、産まれて数週間でプログラムされる とされています。ところが、夏に生まれた人がことさら冬に弱いかと いうと、そんなことはありません。なぜなら、人間は寒ければ 服を着て調節することが出来るからです。冬は適当な服を着て、 暖房で快適に過ごすことが健康的です。

つまり夏の暑い日に、赤ちゃんのためにとエアコンで冷房をしてあげる ことは、赤ちゃんのためになりません。暑ければ水分をたくさんあげて、 汗腺の発達を促すことが、お金では買えない赤ちゃんの生涯の 財産となるのです。

余談ですが、猫はもともと砂漠の生き物ですから(これも異説が ありますが、「暑い所」という見方は変わりません)、暑さに 強い動物です。犬は祖先の狼が北方の寒い地域の出なので、寒さには 強いが熱さには弱い動物と言えます。 犬→人→猫の順に暑さに強いということになるでしょうか。 犬や猫には汗腺が発達していません。犬はハーハー息をして、 舌を冷やすことと呼吸で熱を放出できるようになっていますが、 たいてい夏の最中は、「働かない・何も考えない・できるだけ 涼しいところでじっとしている」という暑さしのぎの3原則を 守って、ぐったりしています。 猫は、夏は一番涼しいところ、冬は一番温かいところを見つける 天才的能力を身につけて、ひたすら暑さ寒さが過ぎ去るのを待ちます。

さて、性能の優れた住宅では、快適な温熱空間を容易に得ることが出来ます。 冬季の棟内温度差の少ない(暖かい部屋と寒い部屋が混在しない)環境は、 健康にも寄与しますし、子供達の成長にも有益です。特に老人には 寒暖の差は循環器系の負担になります。外出する時は、室内温度と外気の温度差が 30度以上になる場合がありますが、この時は衣類を調整することで 対応できます。しかしトイレや風呂に行く時に、上着を着ることは あまり期待できませんし、風呂では服を脱がないわけにはいきません。

夏季にエアコンで冷房して得た快適環境は、上記のように 子供達の成長によくありませんし、外部との大きな温度差は、冷房病とも 呼ばれる調節障害のもとになります。 夏にクーラーを使うのであれば、室温を何度にするかと言うことより、 室外気温マイナス数度くらいに調節する方が身体にも負担をかけず、 健康的に暮らせます。

[注] C. Osmond and D.J.P. Barker, "Fetal, Infant, and Childhood Growth Are Predictors of Coronary Heart Disease, Diabetes, and Hypertension in Adult Men and Women," Environmental Health Perspectives Vol. 108 Supplement 3 (2000), pgs. 545-553.
See also http://www.som.soton.ac.uk/research/foad/barker.asp.