高城高

『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選

2006年12月 荒蝦夷刊 

 幻の作家、高城高の傑作選がついに刊行されました。「幻の」の「幻」たる所以については改めて記すまでもないでしょう。
 収録作品/「X橋付近」、「火焔」、「冷たい雨」、「廃坑」、「賭ける、「ラ・クカラチャ」、「黒いエース」、「淋しい草原に」、「暗い海 深い霧」、「微かなる弔鐘」、「雪原を突っ走れ」、「追いつめられて」、「凍った太陽」、「父と子」、「星の岬」、「死ぬ時は硬い笑いを」  解説・池上冬樹 「原石の輝き」 /高城高 あとがき 「〈一期有限〉ということ」
 仙台を舞台にした作品はすべて収録されています。

 著者インタビュー・作品リスト他、是非、版元・荒蝦夷社のホームペーシをご覧下さい。

 上の書影に違和感を覚えた方もいらっしゃるかと思います。北海道内では「幻の」北海道限定帯(仮称)付きが流通していました。
 現物は未見ですが、多く流通しているのは、日本ハードボイルト文学の原点は仙台にあったことを謳う「仙台帯(仮称)」と思われます。それに対して、多くの作品の舞台となり、現在も著者が住む北海道を意識して制作されたのが「北海道限定帯(仮称)」で、北海道市場の規模を考えると、致し方ないこととは言え比較少数に留まるでしょうから、「幻の帯」と呼んでも差し支えないかと。)

  仙台帯(仮称)
『X橋付近』は既に版元在庫なく、新刊書店の店頭在庫だけのようですが、東京創元社から3-4巻で文庫判「全集」が出る予定で、しかも、第1弾は来年2月の発売だそうです。(第1弾は唯一の長篇、『墓標なき墓場』か?) 完結にどのていどの日数がかかることになるのか、いずれにせよ未読の皆様におかれては、難しい決断を迫られる局面かと。
2007.01.22 北海道の独立系ニュースサイト、ブレーン・ニュース・ネットワーク(BNN)に『X橋付近』の紹介記事が掲載されました
※2007.02.18 北海道新聞の読書欄に紹介記事が掲載されました。
※4月2日付 朝日新聞(東京版)夕刊に「高城高」登場!! 朝日新聞WEB版  残念ながら北海道版には掲載されず。姜尚中センセイの革ジャン姿掲載の「犠牲」になったわけではないだろうが…。
※4月27日からラルズプラザ札幌店で開催の古本市会場内で「雑誌で見る高城高の世界」と銘打った作品掲載誌のミニ展示を行い、挿画入りの誌面で作品発表当時の時代の雰囲気を味わっていただきました。

                 
高城高関連情報
高城高作品『ある長篇への伏線』が掲載されている「呆」誌(No.1 1959年3月刊 北海道ミステリィ文学会)ですが、1号だけの刊行に終わったったことが、主宰者であった脇哲氏の文章によって判明。(「月刊さっぽろ」誌 1975年2月号に収載の「幻の同人誌始末記」)
掲載の経緯について。呼びかけたところ、「わたしの檄にすぐ応えてくれたのである」とあります。「月刊さっぽろ」は、「冷たい部屋」・「ホクロの女」が掲載された「札幌百点」が、数号の「さっぽろ百点」時代を挟み改題された札幌のタウン誌、PR誌です。
6月25日発売の「ミステリマガジン」8月号に掲載された新作「異郷にて、遠き日々」ですが、読点は入らず、「異郷にて遠き日々」が正しいタイトルとのことです。
・5月21日に仙台で開催されたトークショーに出掛けられた方の報告がありました。
「どんぐり1号のときどき日記」2007年5月22日 どんぐり1号さんの日記に、「実際に短篇をひとつ書いてみたとの事である。発表のメドは立っていないというのが寂しいが…。」とあるのが、上の新作です。
高城高「北海道作品」の舞台一覧
作品名・掲載雑誌 主な舞台
「暗い海 深い霧」『宝石』昭和33年10月号 ◎ 釧路
「ノサップ灯台」『講談倶楽部』昭和33年10月号 根室から納沙布
「微かなる弔鐘」『宝石』昭和34年2月号 ◎ M市(根室)
「ある長篇への伏線」『呆』 昭和34年3月
「雪原を突っ走れ」『面白倶楽部』昭和34年4月号 ◎ 川湯
「アイ・スクリーム」『宝石』昭和34年5月号 釧路
「死体が消える」『ポケット・ミステリィ』昭和34年7月 鉱山
「暗い蛇行」『宝石』昭和34年10月号 幌呂川
「アリバイ時計」『北海道新聞』昭和34年11月8日付
「汚い波紋」『増刊宝石』昭和34年12月号 釧路
「海坊主作戦」『アサヒ芸能』昭和35年2月28日号 稚内近くの海岸・札幌
「追いつめられて」『宝石』昭和35年6月号 ◎ 網走
「冷たい部屋」『札幌百点』昭和35年7月号(9号)
「踏切」『宝石』昭和35年11月号 札幌
「凍った太陽」『宝石』昭和36年6月号 ◎ 札幌
「ある誤報」『宝石』昭和36年12月号
「ホクロの女」『札幌百点』昭和37年1月号(24号)
「風への墓銘碑」『エロチックミステリー』昭和37年6月号 根室
「札幌に来た二人」『宝石』昭和37年6月号 札幌
「気の毒な死体」『漫画読本』昭和37年10月号 愛国
「父と子」『宝石』昭和37年10月号 ◎
「風の岬」『エロチックミステリー』昭和37年11月号 襟裳岬
「飛べない天使」『宝石』昭和38年6月号
「ネオンの曠野」『推理ストーリー』昭和38年11月号
「星の岬」『宝石』昭和38年11月号 ◎ 雄武
「上品な老人」『宝石』昭和39年5月号 豊幌
「穴無し熊」『推理ストーリー』昭和43年4月号 札幌
「北の罠」『推理界』昭和44年4月号 函館、札幌、小樽、釧路、根室
「死ぬ時は硬い笑いを」『小説クラブ』昭和45年3月号 ◎ 函館・下北半島
「◎」は『X橋付近』に収録の作品。「?」は特定の土地を舞台としないもの
未読の作品については、戸田和光さんの「本格読みの高城高鑑賞」を参考にさせていただきました。「本格読みの高城高鑑賞(上)」・「本格読みの高城高鑑賞(下)
妄想編
・札幌在住の作家、東直己氏が『X橋付近』を手に取り、感想を漏らされるようなことがあるだろうか。と妄想しておりましたが、非礼を省みず「高城高の世界」のご案内を差し上げたところ、会場にお運びいただくことができました。『荒蝦夷が短編集を出した、と聞いた時は、すぐに取り寄せて、耽読しました。ハードボイルドという「ジャンル」の、日本における草創期の雰囲気を感じて、楽しみました。』とのこと。私が版元だったら、こういうご縁は大切にするのだが…
・東直己と同年、1956年生まれで北海道出身の山前譲氏が、高城高について少しまとまったものを書く機会があるだろうか。
・「アイ・スクリーム」が「アイス・クリーム」となっていたことに気付き、遅ればせながら訂正。この間違いのお陰で妄想を得た。「ラ・クカラチャ」はメキシコの革命歌の題名で、アルゼンチン・タンゴからは「アディオス・パンパ・ミア」の邦題を借用したの「さらば草原」。ではジャズ・ナンバーからの転用はないものか、「淋しい草原に」を「さらば草原」と勘違いしたまま作品リストを眺めていた。見当たらないまま、今度はジャズ・ナンバーの題名に転用できそうなタイトルはないものかと。しっくりくるのが見つからないことにがっかりしたところで、登場人物の名に「梅津」があったことを思い出す。仙台で梅津と言えば、梅津和時!梅津さんが作曲・演奏するナンバー、「X橋付近」。どうだろう。梅津氏を思い出した途端、とてもジャズ・ナンバーの題名になりそうにない作品名でも、立派にジャズ・ナンバーのタイトルになってしまう。「穴無し熊」なんていうのも是非聴いてみたい。曲調は思いも付かないし、多くの同意は得られないかも知れないが。で、「アイスクリーム」。とろけるような甘美なメロディを奏でていたかと思ったら、一転、叫ぶかのようなハードな演奏に。「アイス・クリーム」が「アイ・スクリーム」に転じる、意外性に満ちたナンバー。どうだろうか。梅津和時、かつて「シャクシャイン」というグループを率いていた方である。荒蝦夷も何かに使えるかも知れない。



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