中性脂肪撃退の緑水湖ツーリング

俺の勤めている会社では、年に一回健康診断というやつがある。仕事を終えてから尿を採ったり、血液を抜いたり、レントゲン写真を写したりと忙しいのだが、このうち血液検査の項目に中性脂肪というのがあって、こいつがふえすぎると心臓が止まったり、脳みその中の血管が破れたりしてとても危険な代物だそうな。
正常値は120程度 だが俺の場合はなっ、何と1200近くもあったのだ。こいつはやばい、いやチョーやばい。何といったって心臓や脳みそなのだ。カゼやわきがなどとは重みがぜんぜん違う。かかりつけの医者先生に「中性脂肪が1000を超えたやつで、5年以上生きているやつを見たことがない。」と言われてしまった。
えっ、えらいこっちゃーっ。あせりまくる八幡太郎、「どげしたらええですか。」と医者に聞くと、「お前は毎日ポテトチップスを二袋も食うそうだが自殺行為だ。とにかく有酸素運動を毎日やれ。」とのこと。菓子を食うのはがまんするとして、有酸素運動で一番効果的なのは自転車であると何かの雑誌で読んだことがある。さっそく県内の景勝地緑水湖にツーリング決行。

緑水湖は、俺の住んでいる境港から自転車で二時間半ほどのところにある湖で、中海や宍道湖ほど巨大なものではないが、緑が豊かでとても景色のよい場所なのである。片道二時間半、往復五時間の自転車散歩ならかなり中性脂肪が燃えるに違いない。

朝飯を食って、米子方面に向かって出発。十月の空気はすんでいて気持ちが良い。一年の内で俺が最も好きな季節だ。いつもは弓ヶ浜自転車道を通って米子方面に向かうが、今日は外浜線と言う旧街道を通ることにした。弓ヶ浜自転車道は事故の恐れが少ないものの、空港を大きく迂回したり、一部舗装が無いところもあるのでスリックタイヤを履いた愛車にはちょっときつい所もある。旧街道は見通しが良く、ドライバーからよく見えるので安心して自転車を走らせることが出来る。それに交通量も少なくていいのだ。

鼻歌を歌いながら和田町というあたりを走っていると、前を高校生のあんちゃんが自転車をこいでいる。どうやら鼻歌を歌っているらしい。スピードを上げて追い抜こうとすると俺に気づき、あわてて鼻歌をやめて次の路地を曲がっていった。鼻歌を聞かれて恥ずかしかったのか。俺も鼻歌を歌っていたのだから恥ずかしがることはないのに、と思いつつ鼻歌を続けながら走っていると信号が赤に変ったので自転車を止めて青になるのを待っていた。
さあ青だこぎ出そう、と横を見るといつのまにやら自転車に乗ったおばさんが目に入った。俺の鼻歌を聞いていたに違いない。俺はすごくカッチョワルイ気持ちになり、猛ダッシュでおばさんを引き離した。やはり高校生のあんちゃんは、はずかしかったのだ。すまん、あんちゃん。
ちなみに俺の鼻歌のレパートリーは広く、福山雅治からクラシック、演歌まで何でも思いついた鼻歌を歌う。この日の鼻歌は競馬の京都競馬場開催G1ファンファーレだった。会社の同僚のミチというやつが、最近携帯の着メロでこの曲をダウンロードして鳴らしているのが耳に染み付いていたらしい。まったくもって情けない、あれほど競馬には痛い目にあっているというのに・・・・・

米子市内に入り、ちょっと休憩する為に湊山公園に立ち寄った。ここの公園はかなり広く、静かでいい雰囲気の公園なのでちょくちょく立ち寄っている場所だ。今日もいつものように人もまばらでとても静かだった。
ここでいつもなら缶コーヒーを飲むところだが、中性脂肪には缶コーヒーは良くないので、烏龍茶で我慢することにした。
しかしなんだ、好きなものも食えないというのはこれほどの苦痛だとは思わなかった。これから毎日ポテトチップスも柿の種も缶コーヒーも飲み食いしてはならない。何のための人生ぞ。これも毎日の不摂生が招いたこと、俺自身のせいか。
しかし、皆さんはどう思われる? 美味いものに限って健康に悪い。逆にイワシなど、俺の嫌いなものに限って健康にいい。納豆だってそうだ。何でなんだ。この世の中はこれでいいのか。なっとくいかーん !
湊山公園の裏山を抜けて国道を横切ろうと、車の流れが途切れるのを待っていると、 軽自動車が止まって国道を横断するまで待ってくれた。車の運転をしているのは若くてかわいいおねえちゃんだ。何という心優しいおねえさまなんだ、きっと俺にほれたのに違いない。こういうことは世の中間違ってない。なっとくなっとく。

おもわぬことで気分を良くして先を進む。米子駅の横の高架を走っていると、横を車がびゅんびゅん追い越していく。ここが今回の自転車散歩で、一番危険な所なのだ。自転車通行可の歩道をたいがいの道路につけるべきだと思っている。省エネと、地球温暖化ガスの削減の為には自転車が効率的だ、などと政府のお偉いさんはのたまっているが、それなら自転車で安心して走れる道を作るべきなのである。

米子駅の横を通って国道180号線を西に向かって自転車を進める。ここから先は道沿いに一直線だ。ここの道路もまた歩道の無い個所が多い。危ない所だが、国道に沿って流れる法勝寺川という河川土手に、ちょうど自転車道のような細い道が造ってある。自動車は通らないし、桜並木が造ってありとても気分のいい道だった。
桜並木の木漏れ日の中を鼻歌を歌って走っていく。このときの鼻歌も競馬のファンファーレになっているのに気が付いた。もう当分耳から離れそうも無い。

この土手の道をたどっていくと、西伯町という町に出る。この町には同じ会社で働くケンボウと呼ばれるおっさんが住んでいる。ケンボウは悪い人間ではないのに、最近ついてない。仕事中にあばら骨を骨折する怪我をしたかと思うと、鳥取県西部地震では自宅がめちゃくちゃになるほどの被害を受けてしまった。
ケンボウとは日ごろ親しくしているし、家に遊びに行ったこともあるので地震での被害がどのくらいなのか心配していた。せっかく近くにきているのでケンボウの家を見てみたいと思い、立ち寄ってみた。
田んぼの脇に立っているケンボウの家はかなり大きなお屋敷といった感じの豪邸だったことを覚えている。今度の地震でどんなことになっているのだろう。心配だ。
ケンボウの家はそのまま在った。家の中まではわからないが、外見だけは以前来たときと変わらない。なんだか一安心してほっとした。
鳥取県西部地震が起きてから一年以上経つけど、今なお色々な意味で傷が癒えない人がたくさんいる。月並みな言葉だが、どうかがんばってください。ガンバレ鳥取、島根県民、ガンバレケンボウ!!

ケンボウの家から国道に戻って更に西へ進む。ふと、道路わきの畑を見るとなんだか黒い消し炭のような杭がたくさん立っている。よく見るとひまわりが枯れて、黒くなった残骸だとわかった。
夏の間、あれだけ元気よく咲き誇ったひまわりも、今は無残な屍を晒している。なんだか権勢を誇った軍隊の末路を見るようなような物悲しさを感じた。ひまわりのようにあざやか過ぎるものは、最後は特別無残で物悲しい。俺って詩人。

緑水湖の手前一キロから、急な上り坂となる。上り坂そのものはいいのだが、道路があちこちで工事中で、そこを通る車がすさまじい砂埃を上げる。目がいたい、咳が出る。これも地震のために壊れた道路を修復しているところなのだ。
しかし、ドライバーのマナーは悪い。道路工事自体は、地震の復旧作業なのでやって当然だが、自転車が近くを走っているときぐらいスピードを落として走ればいいと思うのだが。さっきの湊山公園でであったおねえちゃんとはえらい違いだ。
自転車よりも車の方がえらいと思っているドライバー、車椅子に優しい道路を作ることが出来ない行政、この国が本当の意味で先進国といえる日はまだまだ遠い。

坂を登りきると、そこには巨大なダムが現れた。これが緑水湖を作っている賀祥ダムだ。このダムを造った為に緑水湖は生まれた。
かなり大きなダムで、ダムの上を道路が作ってある。この道路の上から緑水湖を見渡すことが出来る。
湖の北側は国道が通っているが、ダムの上の道路をわたって南側に行くと、自然豊かな林道が出来ている。国道は車も多く騒々しいが、林道は景色もいいし、車もめったに走らないので静かだ。もちろん今日はこの林道を行く。


この林道沿いにはたくさんの石碑が立っている。俳句や詩が掘り込んである石碑だ。俺はツーリング日誌は書くが、詩や俳句は苦手で興味もないから今まで創ったことがない。でも今日はせっかくだから俳句を作ってみようと力む。・・・・・・・・・・出来ない。
「緑水湖 ああ緑水湖 緑水湖」くだらん。
興味がないので次々と現れる石碑をよまずにパスしながら走ったが、この俳句や詩は有名な人のものではなく一般から公募した人の作品だということで、そこのところは共感できる。
さらに先に進むと、倒れた石碑が目に付くようになってきた。これも鳥取県西部地震の名残なのだ。今この石碑も復旧作業がなされている。地震の傷跡が消える日はいつのことだろう。

山の上に作ってある展望台に上がって、そこのベンチで飯を食った。いつもはカツ丼やナポリタンなのに今日は中性脂肪を考えて、のり弁当を食う。のり弁当かあ、カツ丼くいてえなあ。しかし食ってみるとのり弁当もけっこう美味しい。こうしてみるとこの俺様は色々なことに柔軟に対応出来る能力を持っている事が分かる。ここがそこらへんのチャリンコ親父との差というモンだろう。八幡太郎違いの分かる三十九歳 。

飯も食い終えたし、タバコも吸ったし、そろそろ家路をたどるかと自転車のペダルをこぎ始める。帰りは湖の北側の国道を通り、来た道を引き返すことにした。国道の一番高い所からもう一度緑水湖を見ると、名前の通り緑色の水の上を足こぎボートが走り回っている。カップルに違いない。独身のおっさんには縁の無い景色に見えて、さっさと帰路につくことが出来た。

この季節は、花がとてもきれいだ。あまり花の名前は知らないがケイトウとか、コスモスはそこらあたりに咲いている。川沿いの土手には何やら赤い変な形の花が一面に咲いていた。「変な花。」 きっと誰も名前など知らない花に違いないと思っていたが、後で生花の先生をしているうちの母親にデジカメ写真を見せると、「この花はホウセンカだ。このぐらいの名前も知らなかったダカ。」と笑われてしまった。男八幡太郎は花の名前などに、かかずらわっているヒマは1秒たりともないのだ。それが男というもんだ。

男の話しが出たついでに、男特有の話しをしたいと思う。男というものは大体にしてスケベエな本が大好きである。つまり一般に言うエロ本のことだ。このエロ本、青少年には良くないと世間では悪役に回されている。女性の裸がよくない代物だというわけだ。本当にそうなのか? 良くないと非難している人は、自分の目で確かめたことがあるのか? 俺は確かめもしないで非難するような人間にはなりたくないので、旅先ではそこの土地の本屋でエロ本をかうことにしている。いや、俺がエロい人間だからではなく、あくまでも本当に悪いものかどうなのかを確かめる為である。その内容たるや・・・・・日本中の川でカヌーをしているサラリーマン転覆隊というカヌーチームは、エロ本のことを悪書といい、まわし読みした後、悪書追放ーっ、と叫び火にくべるそうだ。俺はもったいな・・いや、後の研究のために持って帰るのだが確かにこれは悪い書物「あくしょ」である。弁解の余地は無い。それほど魅力的な女性が大勢・・・・・
たまった悪書は擦り切れるほど研究された後、会社の同僚のジャイのところに引き渡される。ジャイが研究した後の行く先は知らない。


国道沿いに、悪書の自動販売機を発見した。「これはさっそく研究しなければ。」と思い、大枚1500円を投じて「ルンルンパラダイス」を購入。これも研究の為だ。
というか、本当のことを言うと俺は悪書が大好きなんだ−っ! 男なら誰だってそうなんだ。政治家も、教師も、ミヤも、としちゃんも、ミチも、ケンボウもジャイも、そしてこれを読んでいる君も。
ツーリングの後にはエロ本だーっ。エロ本最高ーっ。      

今回の締めくくりは下品になってしまった。反省 ! ( してない、してない。)

 

不摂生は本当に怖いです。運動不足の人は、自転車散歩はいかがですか。気持ちも体もリフレッシュできますよ。