隠岐でクタバル ! 前編
俺の会社の同僚にマック大竹というジジムサイ男がいる。この男は山菜取り、健康談議、トレッキング、若い女性のパンティーライン拝謁、というオヤジ丸出しの趣味を数々持っている。
元々俺も大竹もウィンドサーフィンをやっていて、スピード、バランス系のスポーツが大好きだったはずなのに、やつは今では煮しめを食い、7時には眠むるというジジイの生活をしているのだ。
「これではいかん、大竹を正当な若者に戻すためにキャンプにでもさそわにゃ。」
そう思い立った同僚思いの俺は、さっそく大竹に話を持ちかけてみた。大竹もこのままではいかん、と危機感を抱いたらしく、俺の誘いにすぐに同意したのだった。
しかし、かんじんの俺の都合がなかなかつかない。急に出張のお呼びが掛かったり、夏のボーナスの交渉時期に入ったり、と言う具合に日々はドンドン過ぎていってしまった。
「もう梅雨に入るし、夏になるまで延期するか。」と二人で弱気になっていたが、何と今年の梅雨はカラ梅雨だ。週間天気予報では週末はピーカン天気の表示が出ている。すかさず決行する事に決定した。
隠岐は島前(どうぜん)諸島と、島後(どうご)島という大まかに分けて二つの島に分かれている。島前諸島は見所たくさんだが小さな島の寄り集まりなので自転車を船に乗せてあちこち移動しなければならない。島後は見所としては島前に負けているが、島自体が大きいので自転車で回るのに好都合だ。
結局今回の自転車散歩は島後に決定した。
境港から島後に行くには、境水道を大橋か渡し舟で渡り、島根半島を横断したあげく七類港からフェリーに乗らなければならない。境港から出る便もあるのだが、一日一便しかないのでとても便利が悪い。今回は時間の都合で七類港からの便に乗ることにした。
まず境水道を渡るのに、境水道大橋は重いキャンプ用品を積んで上るのには朝一から億劫だ。しかも交通量が多いので危険が伴う(島根半島の浦ツーリングを参照)。
結局渡し舟を使う事になった。
渡し場に着いてみると、すでに大竹が来てタバコをふかしている。船の船頭のオッサンに「乗るだか?」と言われ、「乗してごっさい(乗せてよ)」と、船上の人になる俺たち二人。
すでにオッサンとオバハンの二人の客が乗っていて、俺たちに「どこから来られたのですか。」と話し掛けてくる。境港市内の者だと言うと、「なんだい、地元か。」と笑っている。この二人、実は俺は知っているのだ。オッサンは今の会社のOBだし、オバハンに至っては同級生の母親なのだ。
この二人と取り止めの無い会話を交わし、船頭のオッサンもニコニコと話し掛けてきて、まずまずの旅のスタートラインとなった。
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渡し舟でエッチな妄想に耽る大竹
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御気楽な大竹と心配顔のはちまん隊長
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島根半島に着き、コンビニで朝飯代わりのパンと紙パックコーヒーを買い七類港を目指す。七類トンネルを抜けるまでは上りである。朝からしんどいし、朝飯も食ってないのでこたえるが、ロージンの大竹に負けるわけには行かない。空元気でしゃべりながらトンネルを越えたが、汗びっしょりで、Tシャツが濡れ濡れになってしまった。それもこれも爆笑顔の大竹に負けるわけには行かないイケメンの宿命なのであった。
七類港に着くと、予想外の人の多さだ。夏の時期、特に盆の時期は人がごった返しているのを経験した事があるが、梅雨前の今これだけ人がいるとは思わなかった。
「エラクラシーッ(うっとおしい)」 二人で散々人の多さを罵ったがどうしようもない。乗船券と手荷物荷札を購入してからパンをかじった。
それにしても、大竹と俺の自転車は相当な重さになっていた。キャンプ用品はテントをはじめ、寝袋、着替え、そして酒(水筒に入れたバーボン)など、いつものツーリングには必要の無い物でぎっしりだ。俺の愛車のランちゃん(ランドマスターという商品名なのでこう命名)と大竹一号(てきとう)の悲鳴が聞こえてきそうだ。この装備で山越えが予想される隠岐の島ツーリングが無事できるのだろうか、しかも自転車ツーリングは初心者の大竹は「もー帰る。」などとゴネずについて来るのだろうか。
ツーリング隊長である俺の手腕が問われる一戦となるにちがいない。
愛車二台をフェリーのカーゴスペースに積み込み、客室へとむかう。すでに客室は満員御礼、天気もいいし屋上のベンチに席を取った。
俺も大竹もすかさずサングラスを取り出す。船旅ですっかり開放的になっている女性客のパンチラを、気付かれずに見るためだ。しかしっ、周りを見渡してもオバサンやガキしかいない。すぐにサングラスをバッグにしまう二人であった。
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大竹のオヤジ丸出し軍足
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おしゃれなはちまん隊長のソックス
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菓子をつまみに、ビールを飲みながら三時間、フェリーは道後島の西郷港に入港した。
西郷の町に上陸を敢行すると、すぐにつり道具屋に向かう。半ズボンとTシャツしか持っていない俺は、夜間の防寒着ヤッケを購入しなければならない。自転車を進めたが、ショボイつり道具屋しか見当たらない。隠岐の島評論家を自称している「マルハゲドン」というオッサンが「西郷は都会だ。米子の駅前と変わらん。」と言っていたので本当かと思えば、デタラメもいいとこ、大きな漁村と言った感じの静かな港町だった。
当然大きなつり道具屋も見当たらない、「一日ぐらい寒くても、男はちまんタローびくともするもんじゃない。」とやせ我慢を決行することにした。「さっすが〜。」と大竹も俺の男気を褒め称えるかと思いきや、無表情で突っ立っている。この男には、男のロマンというものが無いらしい、まったくもってケシカラン話である。
ヤッケは諦め、食料調達のためにコンビニやスーパーを探す。当然無い。(気付かなかったが、一軒だけ地下一階地上二階建てのスーパーがあった。)仕方なく小さなよろずやみたいな所で明日の朝飯と、今晩の食料を調達した。
隠岐の島の知識が無い俺たちは、道後の地形や道路事情を知りたかったのでこの店のオバハンに聞くことにした。なぜか大竹は大張り切りで聞いている。それによると、ここ島後島は坂道の無い所は皆無だとのこと。しかも、島の見所が集中している東海岸通りは凄まじいアップダウンの連続らしい。
これを聞いて坂道の嫌いな俺は、気持ちが萎えるのだった。当然大竹も、と思いきや、ヤツは妙にウキウキしているではないか。「ついに狂ったか。」狂人と一夜を過ごすのはゴメンだ。とゲンナリしたが、ウキウキしている訳がわかった。
この店を出て自転車を走らせていると、いきなり大竹が「今の人、薬師丸ひろ子にそっくりだったな。」と鼻の下を伸ばしている。言われてみれば何となくそうも思える気がするが、言われなければ一般人には絶対にわからない。しかも、オバハンだ。大竹の趣味が全くわからない。狂人にちがいないと、暑い日にもかかわらず背中を冷たい汗が流れた。そんな俺の気持ちも知らずに、「明日、もう一回あの店に行って旅の報告をしよう。」とニヤケる狂人大竹であった。
今日の目的地は、西郷から見て島の反対側になる五箇村という所だ。ここら辺にはキャンプ場が数ヶ所あり、夕日がロウソクのように長細い形の岩の上に輝くという「ロウソク島」なる名所がある。
さっそく西郷の町を抜けて国道に出た。しかし、昼飯を食わなければいくさにならない、隠岐の島名物「隠岐そば」を食いに行こうということになり、一軒の店に入った。
店の畳の間に座り、くつろいで注文したものの、なかなかそばが出てこない。しかも、注文するときにメニューを見たが凄まじく高い。これでいいかげんなそばが出てきたら暴れるぞ、と思って臨戦体制でそばを待った。待つ事30分弱、理性を働かせ暴れなかったものの、これだけ待たせて「ごめん」の一言も無い。これが隠岐時間というものなのかもしれない。
そばの味は、出雲そばに馴れ親しんだ舌には何とも奇妙な味がした。麺は普通なのだが、汁が変わっている。お茶漬けそっくりな味のあっさりした汁なのだ。これはこれでうまいと思ったが、お茶漬けだかそばだか何だかわからない。さっきの店と違って大竹もブーブー言っている。
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蒸し暑いフェリーのカーゴルーム
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お茶漬け味の隠岐そば
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そばを食ってふたたび国道を北に走り出す。途中道を間違えたりしながらも五箇村方面にチャリを進めた。西郷を出てから少し上り坂になっているが、想像したほどではない。馬鹿話をしながら進んでいくと、隠岐国分寺に到着した。
ここは古い歴史のある寺で、全国に国分寺と名のつく所は多々あるが、現存しているのは珍しいらしい。ちなみに出雲にも国分寺はあったのだが、現在では廃寺になっていて、柱が立っていたと思われる基礎の礎石しかない。
ここで大竹と記念写真をとり、せっかくだから中に入ることにした。しかし、中に入るには拝観料が必要なのだ。寺にはあまり興味のない大竹に悪いので入るのはやめにしてせっせと先に進む事にした。
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隠岐国分寺入り口
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まるで桂林、五箇村の風景
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前方を見ると大きな山々が行く手をさえぎっている。今は坂もゆるいが、あの山に近づくにしたがって急になってくるにちがいない。
しかし、今の所鼻歌交じりののんびりしたツーリングコースが続いている。
大竹は何やら道の脇に生えている植物に興味を覚えたらしい。「マタタビだ。」そうつぶやくと前方も見ずにわき見運転をはじめた。
俺のほうはマタタビといわれても興味が無い、「何だ、そのマタタビってのは。」ときくと、「猫に与えると、恍惚の表情を浮かべて酔ったような状態になる草だ。そげなことも知らんだか。」と小生意気にウンチクを垂れてくる。ここはひとつシメておかねばならない、と判断した俺は、「ほんなら犬に与えたら恍惚になるもの知っちょーか。」と聞くと、知らないらしく黙りこんでしまった。俺も知らないが適当に「ミカンの皮とサバの味噌煮をまぜて、ごま油を掛けたものだ。」とウソを言うと、大竹の目が輝きだした。たぶん試してみるつもりだ、ウソなのに。
島の中央まで進むと、さすがに坂がきつくなってきた。といっても、予想していたよりもはるかにゆるい。体力もまだ余裕があったので、大竹と話をしながら進む。
山のピークだろう、トンネルが姿を現し上り坂の終わりを告げる。トンネルを抜けると下り坂だ、五箇村まで一気に下る。 汗びっしょりの体に風が心地いい、途中「水若酢神社」や「隠岐しゃくなげ園」などという観光スポットを無視して通り抜け、久々に民家が密集している五箇村の村落に出た。
ここらあたりの山の様子は少し本土と違う。まるで中国の水墨画のように、剥き出しの一枚岩がそびえているのだ。
海に面した道路に案内板と地図が設置してある。大竹とこれからどこに向かおうか作戦会議をする事にした。このまま先に進めば都万村を通って西郷まで帰ってしまう、このコースは楽だが見所が無い、それよりもローソク島を見に島の東側へむかう事になった。ローソク島の近くには吉浦キャンプ場もありここでテントを張って一夜を過ごせばよい。
看板にしたがって山道を走る。道路はきれいに舗装されているのだが、急な上り坂でひぃひぃ言いながら進んだ。途中にアザラシだかアシカだかのブロンズ像が設置してある訳のワカラン橋を越えてトンネルを通ると、ローソク島展望台という道しるべが立っている三叉路に出くわした。ローソク島展望台方面の道は、さらにきつい坂道になっている。
「おい、行ってみるか?」と大竹に聞くと、坂のつらさで死にそうになっていた大竹は「行かん。」とタダ一言。全く根性が無い。俺は嫁がないが、大竹は根性がないのだ。
強行に「行くぞ。」と言うと、「あっ、クレソンが生えている。」とか何とか言って勝手に展望台とは逆方向に大竹一号を進めだした。もはや帝国軍人の意地も誇りもなくしてしまった大竹は、敵前逃亡を屁とも思っていない。あまりの哀れさに展望台は諦めてクレソンとかいう訳のワカラン草をむしる大竹を優しく見守るサムライはちまんタローであった。
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荷物満載で乙女の悲鳴が聞こえそう ランちゃん
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これまた荷物満載のムサイ大竹一号
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きつい坂道を進む事数十分、やっとキャンプ場の入り口にたどり着いた。小高い山の中腹に展望台が作ってある。その展望台の下がキャンプ場になっているのだ。キャンプ場を上から望むと、水道の設備も、水洗トイレもあり、海辺なので貝を獲ることも出来そうだ。
展望台には一台のRV車がとめてあり、バカなカップルがいちゃつきながら海を眺めている。しかも、目の前にある大きな島をローソク島と間違えて写真までとっている。平成のサムライはちまんタローは、こんなバカな若者を見ると無性に腹が立ってくる。これから先日本の将来をコヤツらが背負って行かなければならないのだ。国が滅ぶわ! 最近はいつにもましてこの手のクソバカが多くなっているような気がする。大竹はそんな事はお構いなしにフキを採るのに夢中になっている。この国もおしまいだ・・・・・
水道設備があるものの、水が出るかどうかはわからない。下のキャンプ場に降りてから水が出ない、では水汲みにまた上がってこなければならないのだ。キャンプ場に降りずに、近くの村落で水を調達する事にした。
山を下った所にちょうど小さな漁村がある。こういう所には「よろずや」が必ず一件あるものだ。案の定一軒のよろずやを発見する事が出来た。
「こんにちはー。」無用心にも店を開けっ放しにして無人になっている店に入り込むと、奥からあわててオバハンが出てきた。ここらあたりではドロボーもいないのかもしれない。ジュースやら菓子やらを買い込んで、「ローソク島はここから見えますか。」とたずねてみたら、「ほんのちっちゃくみえますよ、漁港の方に行けばいいですよ。」と教えてくれた。水はそこらへんの水道水をいただくことにして、さっそく漁港に行ってみた。
漁港の先っぽにある岩山の上によじ登って遠くを見ると、マッチ棒の先ほどの小さいローソク島がかすかに見えた。しかし、見たのと見ていないのではまるっきり違う。一応見ることができたという満足感をもって、村落に帰り水を調達する事にした。
各民家の庭に、水道の蛇口がある。勝手に入って水をいただこうとすると、「勝手に入るのはドロボーと一緒だ。」と大竹がビビってしまい水を汲むことが出来ない。しかたがないのでさっきのよろずやで水をもらう事にした。
「ごめんくださーい。」と、さっきの愛想のいいオバハンが出てくるものだと思い込んで店に入っていったが、ここの店のオヤジらしい偏屈者のオッサンが出てきた。「水を分けてもらえませんか。」というと、「みず? 水ならこっちだ。」と店の脇にある蛇口まで連れて行ってくれた。大竹はビビリまくって直立不動のままである。足元のクレソンも目に入らないらしい。
遠慮なく水をもらい、元のキャンプ場に戻ってきた。シーズンオフなので管理人もいない。近くの塩釜で海水を炊いているオッサンに「ここ、テントはって泊まってもいいですか。」とたずねると、「いいよ、まだシーズンじゃないから金も要らない。便所も水道も勝手に使っていいですよ。」と言ってくれた。
便所は風で入り込んだ砂と松の葉っぱで汚れていたが、ちゃんと水も出るしありがたかった。
水道は出るものの、鉄さびのにおいがするので汲んできた水で煮炊きする事にした。洗顔や歯磨きを水道でやれば貴重な水を使わずに済むので大いに助かる。そしてこのキャンプ場最高の設備がシャワーである。キャンプでは体を洗う事が出来ないものだと思っていた俺にとっては、最高に気の利いた設備なのだ。浜辺の露天シャワーなので湯は出ないが、水が出れば最高なのである。
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意味がわからん、何でアザラシなんだい
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これがローソク島だ! 君には見えるか?
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二人でさっそくテントを張り、つまみの菓子とバーボンを出して一日の労をねぎらう事にした。大竹のテントはムーンライトという小さいけれども雨にめっぽう強い一流品だ。俺も欲しいと思っていたヤツだ。しかし、いかんせん狭い。おれの安物テントのほうが広々していいなと思った。
バーボンを酌み交わし、ベビーサラミなどを食って会社の同僚の悪口を言いながらいい気分で酔う。サイコーの時間だ。レトルトカレーとレトルトライスを食い、また酒を飲む。大竹のコンロと俺のコンロの火力などを話題にしてゆっくりと日が暮れていくのを楽しむのは、普段会社で目を吊り上げて交渉などをしている毎日から比べて何と人間らしい時間の過ごし方かと、心の垢を落としながらの贅沢な一時であった。
やがて日も暮れて、あたりに夜のとばりが降りてくる。しかし、これからが野生児はちまんタローとマック大竹の真骨頂なのだ。手に獲物を入れる容器をぶら下げてひざまで海に入っていく。夜になると貝類は岸に近寄ってくる修正がある。これを手で獲るのだ。
この漁を「よさで」という。大竹も俺も目を皿のようにして波打ち際の岩を見る。
いるいる、昼間は深い場所に潜んでいた貝が、ひじまで手を入れれば獲れる所まで上がってきている。さっそく「にんにゃ」という三角形の小さな巻貝と、サザエを数個手に入れてテントまで意気揚揚と引き返した。
こいつをなべに放り込んで水を入れ、コンロで茹でる事数分、磯のかおりもすばらしい酒のつまみが完成した。大竹がナイフで削ってつくった爪楊枝で「にんにゃ」を食してみる。うまい! 俺は子供の頃からこの「にんにゃ」が大好物で、家でも良く食うが、アウトドアで食うにんにゃはまた一味違う。つぎはサザエだ。大竹は醤油でつぼ焼きにしたいとか何とか贅沢を言っているが、あいにく醤油はない。同じく茹でて食ってみると、これまたうまい。二人でバーボンをぐびぐびやっつけて夜のとばりを有意義に過ごす。
しかし、夜の海辺は思ったより騒がしい。鳥の声や漁船の音が昼間よりも響くのだ。
突然夜の闇から「ホウホウ、ホウホウ」という声が断続的に聞こえてきた。これは境港でもおなじみのフクロウの声だ。俺は両手を合わせて隙間に息を吹き込むフクロウ笛が得意なので、「ホウホウ、ホウホウ、」とやってみた。
何とフクロウも、「ホウホウ、ホウホウ。」と返事をしてくるではないか。これには感動しない人間の大竹も驚いていた。
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手前が大竹のテント。一流品だ
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マルにんにゃ。カクにんにゃのほうがうまい
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いい気分で酒を飲み、酔いが回ってあたりを見回すと、いつの間にやら大竹の姿が消えている。「どこに行ったんだ?」勝手な行動をとる大竹を探すと、何やら海岸べりで水の音がジャージャー聞こえてきた。
どうやら俺に一言も言わず勝手にシャワーを浴びているらしい。リーダーの許可も得ずシャワーなど言語道断だ ! 文句を言ってやろうと近くに行くと、鼻の大きさに似合わない可愛らしい分身をごしごしと洗っているではないか、俗に「鼻の大きさとあそこは比例する。」と言われているが、必ずしもそうではないらしい。ほほえましい気分になって文句を言うのを止めにした。
俺も裸になり大人の一物をぶらつかせながらシャワーを浴びる事にした。大竹が貸してくれた食器洗い洗剤で頭と体を洗い、冷たい水で流すとなんと気持ちがよいのだろう。
体を拭いて、そのままテントの脇に戻りまたバーボンをグビリとやる。半ズボンと半そでTシャツなのに今夜は寒さを感じない。
お子チャマの大竹は早々とテントに入り込み「おやすみー。」と横になる。俺もする事がないので歯を磨いてテントに入り込んだ。鳥の鳴き声や船の音が心地よく聞こえてくる。
と、その時だ。突然不快な大音響が響いてくるではないか。「ぐぉーっ、ぐぉーっ、スピピピー」大竹のイビキである。 我慢していたものの、どうにも腹が立ってテントの外に出た。いつか見たテレビの番組で、イビキをとめるには顔の上で屁をこくのが効果的だ、と言う実験をしていたのを思い出し、大竹のテントの入り口を開け、ズボンもパンツもめくって生ケツを出し、大竹の顔の上10cm上空でこれでもかっというぐらい大きな屁をこいてやった。臭いもすごい、しかも生ケツを出しての生屁だ、さすがの大竹も一瞬たじろいだ寝顔を見せてイビキを止めた。
効果てきめん、これで安心して眠れる。テントに入り、寝袋を腹に掛けて安らかに寝入るイケメンはちまんタローであった。
イビキには生屁が効果的面です。イビキをかいてなくても気に食わんやつには生ケツでの生屁をおすすめします。後編に続く。