息こらえの繰り返し訓練 規定運動後の息こらえ  Breath Holding Time and The rate of the oxygen in lungs, and carbon dioxide      

                                 松下哲哉

息こらえについて

 息をこらえる能力は、従来多くの方面から興味を持たれているが、これの研究については数が少ない。息をこらえる能力を問われるのは一般生活ではまずあり得ないことである。シンクロナイズドスイミングや海女くらいである。私も何人ものシンクロ選手の息こらえテストを行ったがやはり一般の人よりずば抜けた結果を残している。しかし一般の人となぜ違いがあるのかは研究として興味がもたれるところである。 ところで息を止めていると苦しくなってくるがなぜなのか。単純な質問である。しかし答えは難しい。息こらえ中の酸素と二酸化炭素の肺中の割合もしくは肺中の分圧が関わってくる。肺中の二酸化炭素分圧が高くなるとその刺激が呼吸中枢に行き呼吸再開の指令を脳が出すのである。しかし指令が出たからといってすぐに呼吸を再開しなくともある程度はがんばれる。そうすると指令を出す二酸化炭素分圧になるまでの時間が長ければそれだけ息こらえ時間が長くなるということである。また指令を出す二酸化炭素分圧が高ければ高いほど息こらえ時間も長くなる。ということは、このあたりを訓練で鍛えることができれば息こらえ時間は伸びるということである。結論からいうとこの時間は反復練習によって伸ばすことが可能である。100人中100人が必ず伸びることが確認されている。また息こらえ前にハイパ−ベンチレ−ションといって特に呼気を強くした大きな深呼吸を10回ぐらい行うと肺胞内の二酸化炭素分圧が異常に低くなるため指令を出す二酸化炭素分圧になるまでの時間が相当長くなる。結果として息こらえ時間も長くなる。しかしこれはあまり安全な方法でないのでやらない方がよい。

息こらえの繰り返し訓練

    息こらえ時間を伸ばすための繰り返し訓練はまず1日に3回一週間連続で行うことが基本である。1回目と2回目、2回目と3回目の間は2分間の休憩をとる。この時なるだけ深呼吸をさせないようにする。ハイパ−ベンチレ−ションの効果を防ぐためである。休憩時間の2分というのは目安であり、あまり長い休憩は意味がない。訓練の方法はイスに座り大きく2回深呼吸をして、次に大きく息を吸い込み右手で鼻をつまみ出来るだけ長く息を止める。なおこの時計測タイムは読み上げない。タイムを読み上げるときりのいいところでやめてしまう人がいるからである。2分間の休憩をおきこれを3回繰り返す。さらにこれを1週間連続で行う。第1日目の1回目が60秒以内の人は第7日目の3回目は平均1.8倍にタイムが伸びる。第1日目の1回目が90秒以上の人は伸び率が低く第7日目の3回目は平均1.4倍にタイムが伸びる。繰り返し練習を行った約7割の人が最終的に100秒前後まで息を止めることが出来るようになる。中には最初40秒だった人が最後は156秒まで伸びた例がある。1回伸びたタイムは1ヶ月以上訓練しなくてもほとんど短縮はしない。  

規定運動後の息こらえ訓練(専門家と行って下さい 一般の方は行いません )

    この訓練は息こらえの繰り返し訓練よりさらにきつい訓練である。この訓練から始めるのは勧められない。まず繰り返し訓練によってタイムがある程度伸びたことを確認してからこの訓練を行うのである。この訓練は1日2回を限度として行い必ず二人(必ず専門家と)で行う。危険が伴うので絶対に素人が一人では行わない事。また体調の悪い時には行わない。訓練の方法はその場で1秒間に3回の駆け足を1分間行う。足の高さは10センチ以上上げる。その場駆け足をしているときには出来るだけ普通に呼吸をするように心がける。ハイパ−ベンチレ−ションの効果を防ぐためである。終わったら立ったまま1回大きく息を全て吐き、次に大きく息を吸い右手で鼻をつまむ。そして出来るだけ長く息を止めている。この時タイムは読み上げない。ただ規定運動後の息こらえ訓練はこれ自体はタイムを伸ばすことが目的ではなく、あくまでも呼吸器や循環器の向上が目的である。訓練には無理はつきものだが、規定運動後の息こらえ訓練はあまり無理をしない方がよい。規定運動後の息こらえ訓練ほどは効果はないがこれに似た訓練に閉息歩行(息を止めたまま出来るだけ歩く)や色々な日常動作を閉息で行う訓練がある。これだと特別な時間と場所は必要ない。  

ハイパ−ベンチレ−ションが危険な理由

   ハイパ−ベンチレ−ションとは呼気を強くした大きな深呼吸のことである。これを行うと肺中の二酸化炭素分圧が低くなり息こらえ時間が大きく伸びる。しかし肺中の酸素分圧にはそれほど変化はなく呼吸再開の指令までの時間が長くなることによりブラックアウト(脳の酸欠状態で意識を失うこと)を起こしてしまう危険がある。したがって確実に息こらえ時間は長くなるが長くする方法として決して安全な方法ではない。むしろ危険な行為である。私は息こらえ訓練の前にハイパ−ベンチレ−ションを行ったと思われる被験者については15分以上たってから訓練に入る事にしている。

注:本文と画像は全く関係がありません。

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